広島市議会議員(安芸区)

小選挙区制の恐さと政治家の信念

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 予想されていたこととはいいながら、昨日の衆議院総選挙の結果には考えさせられました。4年前のいわゆる郵政選挙も同様でしたが、風向き次第で大勝と惨敗が起こります。これが小選挙区制の恐さです。かつての中選挙区制の下で行われていた総選挙では候補者は国の将来を語っていましたが、現在のような選挙では、有権者に耳障りの良い公約を示しがちです。「今は苦しいけど将来にために我慢してください」とは言えません。昭和初期の不景気のときに金本位制を導入するために命を懸けて国民に耐乏を訴え、軍部などの圧力をはねつけ、超緊縮予算を組んだ浜口雄幸総理と井上準之助蔵相の気概を今こそ政治家は持たなくてはならないと痛感しています。ふたりはともに凶弾に倒れましたが、井上準之助は蔵相を受けるにあたって死を覚悟し、財産の内容をすべて妻に伝えたそうです。ふたりの生き様は、城山三郎著「男子の本懐」に詳しく書かれています。ふたりの死後、軍部が暴走し、日本は破滅への道を歩みました。彼らが凶弾に倒れなければ日本は違った道を歩んでいたことでしょう。わたくしにとってこの作品は何度も読み返す価値のあるもので、「男子の本懐」はわたくしの座右の銘です。政治家としての信念を教えられました。この小説の最後の部分が好きですので、紹介します。

 「青山墓地東三条
 木立の中に、死後も呼び合うように、盟友二人の墓は、仲良く並んで立っている。位階勲等などを麗々しく記した周辺の墓碑たちとちがい、ふたりの墓碑には、「浜口雄幸之墓」「井上準之助之墓」と、ただ俗名だけが書かれている。よく似た墓である。」

 本を閉じたあと、しばらく余韻が残るような素晴らしい結びです。