広島市議会議員(安芸区)

世界にはこんな独裁者がいる

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 少々寒くなりました。


 昨日、「世界の独裁者」(幻冬舎新書。六辻彰二著)を読みました。改めて世界は広いと感じました。
 多くの日本人にとって「外国」とは先進国です。では、先進国とはどんな国をいうのでしょうか。一般のイメージからすれば、国民ひとりあたりの所得水準が高く、政治的にも自由と民主主義が保障されている国でしょう。厳密にいえば、OECD経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)に加盟する23か国を指します。日本と韓国を除き、ほとんどは欧米諸国です。逆にいえば、、世界のほとんどの国は先進国ではないということです。2011年現在、国連加盟国は192か国であり、先の23か国を除いた169か国は先進国ではないのです。


 さて、独裁者です。著者は、以下の基準のすべてを満たす個人を独裁者と定義しています。
1.行政、立法、司法の三権にまたがる権力を、制度的、非制度的にかかわらず、保持していること。
2.法律の規定や民主的な手段によって、そのポストから交代させられることが制度上もしくは事実上できないこと。
3.野党、マスメディア、市民団体など、自らに敵対的な勢力の活動を、手段を問わず制約していること。
 独裁者になることもなかなか難しいようです。この本の中では「現代最凶の20人」と銘打って多種多様な独裁者が紹介されています。


 ロバート・ムガベジンバブエ共和国大統領。「私腹を肥やすために戦争をする最悪の大統領」と紹介されています。米紙ワシントン・ポストの週末紙パレードは、毎年「世界最悪の独裁者ランキング」を発表していますが、2011年堂々の第1位がロバート・ムガベです。ジンバブエは、2005年に公開されたニコール・キッドマン主演の映画、「ザ・インタープリター」に描かれた架空の独裁国家のモデルと言われています。ムガベは、批判的な報道をしたジャーナリストや野党指導者を次々と逮捕しました。また、大統領選挙の決選投票前に弾圧はさらに激しくなり、野党指導者だけでなく、その家族まで襲撃し、対立候補の夫人は片腕と両足を切断され、まだ生きているうちに家に火をつけられたそうです。結局、対立候補は立候補を断念しました。こうしてムガベは不戦勝で5選を果たしました。
 また、隣国でもないのにコンゴの内戦に軍事介入し、グレース夫人の名義でコンゴ国内のダイアモンド鉱山を手に入れました。ムガベとその親族は国内に6000ヘクタールの農地を所有し、労働者を無償で働かせています。大統領が自国民を奴隷にしているのです。コンゴへの軍事介入には多大な戦費を費やしたため、2009年には、2億%という天文学的なインフレ率を記録しました。1年で物価は200万倍になったということです。ジンバブエの平均寿命は42歳で、これは内戦が続くアフガニスタンと並ぶワースト1位です。しかし、もともとはムガベはよき指導者でした。1980年代には乳幼児死亡率の低さや識字率の高さで「ジンバブエの奇跡」と称賛され、ムガベはイギリス女王からナイトの称号を贈られたこともあります(当然、のちに取り消されていますが)。権力は確実に腐敗するのでしょう。


 
 ムガベ以上に最悪の独裁者と言われているのがテオドロ・オビアン・ンゲマ:赤道ギニア共和国大統領です。「神か、食人鬼か。謎に包まれた独裁者」と紹介されています。赤道ギニアでは極端に閉鎖的体制が敷かれています。文字がないなどの極端に文化度の低い地域は別にして、世界の中でおそらく唯一、日刊紙が発刊されていません。テレビは公営放送のみで、唯一認められている民間ラジオ局はンゲマの息子の経営です。国営のラジオ局はンゲマのことを「全知全能を備えた者である」と称賛しています。また、ンゲマは人肉を好んで食べると噂されています。赤道ギニアの人口の80%を占めるファン人の間では、食人は相手の力を取り込む一種の呪術と捉えられています。かつてのウガンダ大統領、イディ・アミンも人肉を食べていたといわれていました。赤道ギニア国会の議席100のうち、99議席はンゲマの政党が占めています。野党に対する弾圧はムガベと同様です。さらに驚くことは、ンゲマは一方で世界有数の資産家です。2006年米紙フォーブスはンゲマを「世界有数の資産家である国家元首」の一人に数え、その資産を6億ドルと試算しました。石油による収入の恩恵を国民にほとんど還元していません。国内の反体制派は超法規的な治安部隊によって無力化されています。ンゲマの独裁は当分安泰のようです。一説には、一夫多妻制のもとで40人の子供がいるようです。長男は欧米諸国で豪華な暮らしをし、2006年にはビバリーヒルズに3500万ドルの豪邸を購入しました。



 そのほか多士済々の独裁者が紹介されています。北朝鮮金正日、先日葬られたリビアカダフィも登場します。世界は広い。日本に生まれてよかったことを実感しました。