広島市議会議員(安芸区)

臓器売買の現実(1)

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 朝夕涼しくなってきました。昨日、我が家のベランダでエンマコオロギを見つけました。日の入りの早さとともに、秋を感じます。


 さて、人体の一部を売買するマーケットがあることを噂に聞いたことはありませんか?例えば、腎臓を売ったフィリピン人の例や、中国で法輪功信者の死体から臓器が摘出されているなどです。調べてみると実際に行われていました。ショッキングな現状です。今日は卵子のマーケットについて書きます。



 地中海の小国、キプロスでは公然と卵子が売買されており、世界の卵子市場の中心地となっています。キプロスで受精卵の移植までフルコースを受ける価格は8,000ドルから14,000ドルで、ほかの安価な国の相場に比べて3割安い水準です。重要なことは、キプロスでは不妊症患者が卵子のドナーを2週間以上待つことがない点です。それほどドナーのリストが充実しています。ドナーのリストには国籍、民族、身長、体重、血液型、肌の色、毛髪の色、瞳の色、年齢にような身体的な特徴だけでなく、学歴、職業やアスリートとしての能力などもそろっています。当然のことですが、美人や高学歴の女性の卵子は高い値段が付けられます。
 


 しかし、実際にはドナーは貧しい階層の女性がほとんどです。大半は東欧の貧しい移民のようです。キプロスにいるロシア、ウクライナモルドバルーマニアからの移民女性3万人のうち、4人に1人が卵子を売ったという統計があります。新聞に「子供のいない家族を助けるために、卵子の提供者を求む」という内容の広告が掲載されています。
 体外受精の最先端を走っていたイギリスでは2007年に卵子ドナーに金銭を支払うことを禁止しました。その結果、イギリスではドナーが姿を消しました。こうしたことも、キプロス卵子売買が盛んになった理由の一つでしょう。



 重要なことですが、卵子の採取にかかるリスクがあります。採取のためにホルモンを使った排卵誘発剤をドナーに注射します。このため約3%の女性が卵巣過剰刺激症候群を発症します。これは卵巣が腫れ上がって卵子が過剰に作り出される状態です。実は、この状態はドナーと契約している医師にとってはこの上ない好都合です。1回の操作でたくさんの卵子を得られるのですから。イスラエルの医師が訴えられたのは、こうしたことが背景にありました。彼はドナーに全く知らせずに卵巣を過剰に刺激し、1回の排卵でなんと、181個の卵子を採取していたのです。



 さて、卵子売買の行き着くところはデザイナーベビーです。美人で,頭がよく、モデルのようなスタイルで運動能力の優れた女性の卵子なら、驚くような価格が付くでしょう。さらに、こんな優れた卵子に、同様に優れた男性の精子を受精させて生まれた子供なら、100万ドル出しても欲しいという不妊カップルも出るでしょう。クリント・イーストウッドの映画、「ミリオンダラー・ベイビー」です。



 もう一つのケース。ゲイのカップルにも自分の子供が持てることになります。つまり、買った卵子に自分の精子を受精させ、代理出産させれば、明らかに自分のDNAを受け継いだ子供が生まれるということです。
 次に紹介するのは実際にあった例です。イスラエルのゲイのカップルがカナダで結婚しました。彼らはインターネットで卵子のドナーと代理母を探し出しました。そのドナーから提供された2個の卵子カップルの精子を受精させ、代理母に移植しました。そして、めでたく(?)双子が誕生しました。この双子を養子にして、イスラエルへ連れて帰りました。
 このゲイのカップルと双生児の親子関係はどうなっているでしょう?子供はそれぞれの父親の遺伝子を受け継いでいます。しかも、同じドナーから提供された卵子から生まれたので兄弟です。4人それぞれ血縁関係があることになります。ゲイのカップルにとってはこれ以上の関係は望めないほどの理想的な親子関係でしょう。



 体外受精が行われて30年が経過し、現在全世界で毎年25万人の試験管ベビーが生まれています。その一方で、いま世界ではこんなことが行われているのです。不妊症に悩むカップルにとっては福音ですが、医師であるわたくしにも、どこまで行くのか予想できません。次回は「盗まれる遺体」について書きます。