広島市議会議員(安芸区)

立場が異なる!!株主と銀行

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 強い風の中に暖かな日差しが射しています。去りゆく冬と来たるべき春がせめぎ合っている感じがします。
 左近の桜・右近の橘。桃の節句ももう間近です。


 昨日で6回に亘った「財務分析の基礎」講座を修了しました。合計9時間の長丁場のコースでしたが、大変に勉強になりました。この講座は、「財務諸表入門」、「財務諸表の基礎」に続くステップアップのコースです。実際の上場企業の財務分析なども学びました。広島市の財政に役立てたいと思います。


 以前に、任天堂の決算が悪かったことを書きましたが、「腐っても鯛」、1年や2年収益が減少しても財務は上場企業の中でも断トツの優良企業です。総資本に対する自己資本の比率を示す「自己資本比率」は88.0%と他を寄せ付けません。現金や有価証券などの流動資産は81.9%もの大きさです。しかし、このことは、俗な言葉で言えば「貯め込んだ利益を有効に投資せずに遊ばせている」となります。飛躍的に成長する企業とは言えず、投資家からすれば株式を購入する意欲がそがれる企業とも言えます。しかし、逆に債権を有する銀行から見れば絶対に安全な投資先とも言えます。


 同様な例として「花王」が2005年12月に「カネボウ」を4400億円で買収したときの評価に現れています。買収に要した4400億円は全額借金で賄いました。このとき、市場での評価は相反しました。つまり、株式市場では化粧品部門の強化を評価して花王の株が急騰しました。一方、R&Iという格付け会社は、4400億円もの有利子負債が財務構成や資産効率の悪化につながるとして、花王の格付けをダブルAプラスからダブルAへ1段階下げました。
 ここでも、株主と銀行の立場は大きく異なりました。


 典型は、2008年8月に倒産した「アーバンコーポレーション」です。利益率の指標の一つである「自己資本利益率(ROE)」は自己資本に対する当期純利益を表します。つまり、自己資本をどれだけ有効に使って利益を稼ぎ出したかの指標です。同社のROEは2006年には第1位、倒産する前年の2007年でも大平洋金属ソフトバンクに次ぐ第3位で、群を抜いた利益率です。
 アーバンコーポレーションは、低い自己資本比率でありながら、身の丈以上の借金でアグレッシブな経営をしていたことになります。好調の時はいいが、一旦市場が冷え込んだら、在庫が積み上がって一気に経営を圧迫します。「危ない橋を渡っていた」と言えます。同様に、ソフトバンクも膨大な借金を抱えながら大きな利益を稼ぎ出していることになります。このような経営姿勢は、有限責任しか追わない株主にとっては「大化け」する可能性を秘めた魅力的な企業です。半面、安全性を第1に考える銀行にとっては危ない企業です。実際に経営が危うくなった2007年後半から銀行が借り換えに応じなくなったことがアーバン倒産の原因です。


 日本企業は成熟型が多く、任天堂に見られるように収益を生まない現金資産を貯め込んでいます。上場企業は約60兆円の利益を貯め込んでいます。利益剰余金は本来、株主のものです。日本企業は株主への還元が不十分といえます。 このうちのいくらかを投資に回せばデフレや不景気の脱却につながるでしょう。