広島市議会議員(安芸区)

鉄の女が死去

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 日々春を感じます。この時期の風は少し冷たいこともありますが、暖かさを感じる心地よさがあります。

 昨日、英国の元首相、マーガレット・サッチャーが亡くなりました。享年87歳でした。ポピュリズムに陥ることなく自分の意志を貫いたサッチャーはわたくしがもっとも尊敬する政治家の一人です。
 いまの日本に、国民から嫌われても信念をもって政策を進める政治家がいるかを考えると、ノーと答えざるをえません。
 野田元総理が、多くの国民が反対する消費税増税を進めた?それは自らの信念ではなく、財務省の思惑に従っただけでしょう。
 国民の大多数が反対した安保条約改正を、まさに命を懸けて進めた岸 信介は全く違いました。デモ隊に殺される覚悟で弟の佐藤栄作と総理官邸で待機した回想録には政治家の意志の強さを感じました。
 戦後の日本の進むべき道を作った吉田 茂、3公社を民営化した中曽根康弘も同様です。


 昨年公開された「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」では、雑貨屋の可憐な娘が政治家として大成する様子が見事に描かれていました。最大の見せ所はフォークランド紛争です。大西洋の対岸の小さな島へ軍隊を送ることで多くの兵士を失うことや、厳しい財政事情の中での経済的デメリットを強調する閣僚に対して、信念を貫きます。
 サッチャーを説得に来た米国の国務長官は、「わたしは何度も戦争を経験した。フォークランドへの派兵は慎重に考えるべきだ」と諭します。その時のサッチャーの答えは、「わたしもいままで、政治家として毎日男たちと戦ってきました。フォークランドには英国の威信がかかっている」でした。国務長官は「グーの音も」出ませんでした。


 この映画がヒットした最大の要因は、サッチャーを演じたメリル・ストリープでしょう。あらためてビデオを見ましたが、一言ずつはっきりと発音するしゃべり方や、太めの腰回りを振っての歩き方は、まるで本人が出演しているような錯覚さえ覚えました。想像を超えるほどの練習をしたはずです。彼女はこの演技で第82回アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。
 英国初の女性党首選に立候補するときには、プロジェクトチームが彼女に演説や演技指導をします。若々しい女性政治家が堂々たる党首に成長する様が見事に描かれていました。
 労働組合に対して一歩も引かず、党首討論でも労働党相手にユーモアを交えながらのディベートには、思わず拍手したくなります。
 

 英国病から回復させつつ、フォークランド紛争に勝利したときがサッチャーの絶頂でしたが、戦争で生命を失った兵士の遺族一人一人に涙を流しながら手紙を書く姿には近寄りがたい迫力がありました。
 また、米国のレーガン大統領と協力して東西冷戦を終結させ、ソ連を崩壊させた手腕は傑出していました。サミットでレーガンとダンスするシーンは本物の映像でしたが、愛くるしささえ感じました。


いつだったか、英国会内にサッチャー銅像の除幕式がありました。そのとき彼女が言った言葉、「わたしにはブロンズではなく、鉄の像の方が似合うでしょう」には笑ってしまいました。
 信念を貫いた政治家マーガレット・サッチャーは、まさに「鉄の女」でした。ご冥福をお祈りします。