広島市議会議員(安芸区)

曽我蕭白のド迫力に圧倒されました

 
 「雲竜図」

 
 「雲竜図」全体図。縦は165cmの巨大さ。

 
 「龐居士・霊昭女図屏風」
 中国唐代の隠者龐居士とその娘霊昭女を描いたとされますが、その好色的な眼差しは、女性の脛に見とれて法力を失った久米仙人ともいわれています。曽我蕭白の皮肉な眼差しが読み取れます。制作年のわかる蕭白最初の作品としても貴重。

 
 「風仙図屏風」
 一陣の風の中で剣を持つ中国の仙人陳楠[ちんなん]が、池に潜む龍を追い出して天の水門を開かせ、旱魃[かんばつ]を救う場面とされる。龍は黒雲となって画面の上に勢いよく昇る。水は激しく渦巻き、風に吹き飛ばされた従者の表情も面白く描かれています

 
 「虎渓三笑図屏風」
 廬山に隠棲した東晋[とうしん]の僧慧遠[えおん]のもとを訪れた陶淵明[とうえんめい]と陸修静[りくしゅうせい]。話に夢中になった慧遠が俗世に通ずるとして渡らぬと決めた橋を越えたことに気付いて3人で大笑した場面が描かれています。3人の笑顔がなんともユーモラス。。

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 みなさん、連休のお疲れが出ていませんか?


 わたくしは、ゴールデンウィークの後半を利用して名古屋と大阪の美術館巡りをしました。きょうは大阪市立美術館で開催中の「ボストン美術館 日本美術の至宝」について書きます。


 明治新政府が慶応4年に発した神仏分離令によって、多くの寺院や仏像が破壊されました。本来は神道と仏教の分離が目的であり、仏教排斥を意図したものではありませんでしたが、結果として廃仏毀釈が行われました。神仏習合の廃止、仏像の神体としての使用禁止、神社から仏教的要素の払拭などが行われ、寺院の廃合、僧侶の神職への転向、仏像・仏具の破壊、仏事の禁止などが急激に行われました。明治4年1871年)ごろ収束しましたが、影響は計り知れないほど大きいものでした。


 さらに、明治4年1月には寺社領上知令が布告され、境内を除き寺や神社の領地が国に取り上げられました。それまでに暴力的な破壊をこうむっていた寺はこれにより経済的な基盤を失い、一層困窮し荒廃しました。奈良の名刹興福寺でも僧侶全部が神主になり仏像や伽藍を破壊しました。五重塔も金具を取ることだけで売られ、焼かれようとしましたが、延焼をおそれた近隣の住民の反対で中止されたという記録が残っています。
 このころ、国宝級の仏像や仏具が二束三文で売られたようで、海外に渡ったものも数多くありました。
明治18年に来日して東京大学政治学、経済学、哲学などを講義していた米国人フェノロサはこの状況を深く憂えて日本美術の復興に尽力しました。彼と協働したのが岡倉天心です。二人はのちに東京芸術大学の前身である東京美術学校を設立しました。フェノロサは特に狩野派の絵画に惹かれて入門し、「狩野永探理真」という画名を許されたほどです。また、のちに仏教に帰依しています。


 フェノロサと天心が収集した日本の美術品は10万点に上ると言われています。フェノロサは明治23年に帰国し、ボストン美術館東洋部長として日本美術の紹介を行っています。今回の美術展はフェノロサが収集したものの一部が紹介されていますが、フェノロサが日本美術の恩人と呼ばれる理由がよく理解できました。狩野派の絵画もさることながら、わたくしが最も感銘を受けたのは曽我蕭白の作品でした。とくに壁一面を覆う「雲竜図」のド迫力にはしばらくその場を動くことができないほどでした。蕭白に比べたら、伊藤若冲も形無しです。興味がある方はインターネットで曽我蕭白を検索してみてください。
 

 以前、アフガンでタリバン偶像崇拝を禁止する意味で貴重な仏像を爆破する映像が流れ、嘆息したことがありました。日本でもそれと同様の蛮行があったことは忘れてはならないでしょう。教養の低い成り上がりの指導者が文化や歴史を破壊することはいつの時代でも起こりうることなのでしょう。


 ミュージアムショップでは、墨絵の陶板が20万円で売られていました。世界で限定100点の貴重なものだそうですが、わたくしは興味がわきませんでした。おかしかったのは、それを売っている方が「これほどの混雑なのに大阪の人はここには来ていないのかもしれない」と言ったことです。さらに、「橋下市長が言ったように、大阪市民は大阪市立美術館があることを知らないだろう」とも言っていました。そこでわたくしは問いました。「市長はこの展覧会に来ましたか?」と。答えには笑ってしまいました。


「あんな教養のない市長が来まっかいな」


 蕭白のほかにも、快慶の弥勒菩薩立像や吉備大臣入唐絵巻、平治物語絵巻、狩野元信の韃靼人狩猟図、長谷川等伯の龍虎図屏風、伊藤若冲の鸚鵡図(おうむず)・十六羅漢尾形光琳の松島図屏風など国宝級、重文級の至宝が楽しめます。 
次回は、名古屋市立美術館で開催中の「上村松園展」について書きます。