広島市議会議員(安芸区)

「はだしのゲン」について質問しました

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 秋らしくなってきました。稲刈りも始まったようです。収穫に感謝し、神を敬う「祭り」ももうすぐです。


 
 広島市出身の中沢啓治の漫画「はだしのゲン」の閲覧制限が松江市で問題となりました。8月31日にわたくしの考えを書いたところ、多くのコメントが寄せられ、市民の関心の高さが窺えました。一方で、この問題に関して広島市の見解がほとんど伝わってきませんでした。
 こうしたことから、わたくしは9月21日の文教委員会で「はだしのゲン」について質問し、市の見解を求めました。以下はその内容を簡単にまとめたものです。
 まず、「はだしのゲン」に関してのわたくしの考えを述べて質問に入りました。



 中沢さん本人が語っているように、原爆の悲惨さを伝えるには「はだしのゲン」に描かれているような表現でも不十分であろう。教材に眼を通したが、被爆体験を伝えるための作品としては評価できる。しかし、この作品の後半部分はまったく異なる。
なぜ中国での日本軍の残虐行為が描かれなければならないのか理解に苦しむ。中国人の首を切り落としたり、婦女暴行をしたり、妊婦の腹を切り裂いて胎児を取り出すなど残虐な場面を子供に見せてよいはずはない。松江市教育委員会が閲覧制限を求められたのは、こうした歴史的に証明されていないことを描いたことを問題視したことも一因であろう。


 わたくしが初めて被爆体験を聴いたのは、中学1年生の8月6日。当時通っていた中学では夏休みに補習があったが、数学の先生が授業を行わずに自らの被爆体験を50分にわたって話してくださった。大変な衝撃を受けたことを思い出す。
 同様に、先の戦争は日本がすべて悪かったという論調も幼い頃に聴かされて、信じ込んでいた時期もあった。中国や韓国が幼児期から反日教育をなされて洗脳されているのと同じ。善悪の判断が十分にできない幼児期の教育は慎重の上にも慎重であらねばならない。
 作品の中で、ゲンは「天皇が最大の戦争犯罪人だ」とか、「天皇は刑務所に入るべきだ」とか、天皇のことを「貧相な面をしたじいさん」だとか罵っている。「日本軍は中国、朝鮮、アジアの各国で3000万人以上の人を残虐に殺してきた」とも語っている。それは作者自身の考えであろうが、このような表現は子供に対して悪影響がないはずがない。これは言論や表現の自由とは全く次元の違う話である。そこで質問をする。

(質問1)今年度から広島市立学校平和教育プログラムがスタートした。広島市は「はだしのゲン」を教材として用いていると市長がコメントしている。平和教育プログラムにおいて、「はだしのゲン」はどのような場面でまた、どのような目的で使われているか?
(答弁)「はだしのゲン」は作者自身の被爆体験などをもとに創作された作品であり、激動の時代にたくましく生きようとする主人公の姿や、二度と戦争を起こしてはならないという強い願いを読者に訴える内容である。
 平和教育プログラムでは、「はだしのゲン」の作品の中から、厳しい戦時下においても家族で助け合い、懸命に生きようとする家族の姿を描いた場面と、愛する家族の命が原爆によって目の前で奪われる場面を取り上げて教材とした。これによって、子どもたちが家族のきずなや平和の大切さ、命の尊さを学習することを狙いとした。

(質問2)この作品を個人が購読して読むことについては自由であろう。しかし、「はだしのゲン」が学校の図書室にあることは不適切であると考える。
 学校図書館で購入する図書は誰が決めるのか?
(答弁)教職員が検討し、最終的には学校長の判断により選定している。

(質問3)広島市立学校の図書館で「はだしのゲン」を置いているのは何校あるか?
(答弁)各学校の図書の配架における調査は行っていないので、把握していない。

(質問4)小学校社会科の「天皇」についての学習指導要領には、「天皇が日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることを理解できるようにする」とあり、「指導を通して、天皇についての理解と敬愛の念を深める必要がある」と結ばれている。この作品の後半部分は明らかに学習指導要領の理念から逸脱している。学習指導要領は学校図書館に適用されないのか?
(答弁)学習指導要領には、学校図書館における図書選定に係る記載はない。

(質問5)社会科で天皇に関しての授業で「はだしのゲン」を使うことができるか。
(答弁)社会科の授業で、教科書に加えて他の教材を用いる場合には、児童の実態を踏まえ、学習指導要領に基づく社会科の目標や内容が達成できるかどうか考えて判断する。



 なんともスッキリしない答弁でしたが、教育委員会としてはこれ以上踏み込んだ答弁はできないようです。
 最後に「学習指導要領、平和学習プログラムの理念を逸脱しないように指導を求める」と要望して質問を終えました。