広島市議会議員(安芸区)

平和公園の全面禁煙化可決

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 

 今日は9月定例会の最終日です。午前中の本会議で、広島平和記念公園を全面禁煙化する条例改正案が可決されました。
 現在、平和公園には灰皿3ヶ所と喫煙所1ヶ所があり、ここでは喫煙できることになっています。周知期間と、喫煙所の扱いをどうするかを考慮して、施行は約1年半後の平成30年4月1日としました。議会は立法府です。条例を作ることが最大の権能のひとつです。今回の議員提出による条例改正は議会としての責務を果たしたといえるでしょう。
 公明党の渡辺幹事長が趣旨説明を行い、わたくしは賛成討論しました。賛成討論の論旨は以下のとおりです。



 議員提出第3号議案「広島市ぽい捨て等の防止に関する条例の一部改正について」賛成討論を行います。
 この改正案は広島平和記念公園を全面的に禁煙にしようとするものです。言わば、「広島平和記念公園禁煙条例」と呼べるものです。

 今年5月31日の世界禁煙デーに東京で厚生労働省が開いたシンポジウムでの、国立がんセンターのグループによる発表は衝撃を与えました。それは受動喫煙によって肺がんや脳卒中で死亡する人が国内で年間に1万5000人に上るという推計です。また、8月30日には受動喫煙で肺がんになるリスクは受動喫煙しない場合に比べて1.3倍になることも明らかになりました。もやは受動喫煙の防止対策は喫緊の課題です。

 2003年にWHOで採択された「WHOたばこ規制枠組み条約」(以下枠組み条約と略します)は、現在日本を含め177の国と地域が締結し、世界人口の88%をカバーしています。この条約では、締約国にたばこの需要を減らし、たばこの煙にさらされることを防ぐための法的措置を講じることを求めています。この採択に当たっては、わが国はドイツ、アメリカとともに、厳しい規制の採択に反対意見を述べ、WHOの他の締約国から「悪の枢軸」と酷評された恥ずべき経緯があります。
 わが国も翌年の2004年にこの条約に署名し、条約に定められた期限である2010年2月までに公共の場における完全禁煙を実現するための法的措置を講ずる義務と責任を負うこととなりました。わが国とともに悪の枢軸と評されたドイツは、2007年に受動喫煙防止法を制定しました。アメリカも2009年にオバマ大統領が、連邦食品医薬品局に強力な権限を与える「たばこ規制法」に署名しました。しかし、わが国では条約に定められた期限を6年以上経過したにも関わらず、なんら法的措置を講ずるに至っていません。これが国の怠慢であることは明らかです。国際条約は、内閣が締結し、国会が承認し、天皇が公布したものです。日本国憲法第98条には、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に順守することを必要とする」と定められています。枠組み条約に関しての我が国の現状は、この憲法第98条にも違反しています。

 枠組み条約の条文とガイドラインの中で最も注目されているのは、「職場、公共交通、公共の場所で人々をたばこの煙から保護する」受動喫煙防止について定めた第8条です。その条文には、締約国は、たばこの煙にさらされることが、死亡、疾病、及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。締約国は公共の輸送機関、屋内の公共の場所や適当な公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な措置を講ずる。と謳われています。
 そして、この第8条のガイドラインには、たばこの煙からの保護義務は、基本的人権と自由に基づいたものであり、個人を受動喫煙から守る義務は、政府に、個人をその基本的人権と自由の脅威から守る法律を執行する責任がある事を意味する。とも書かれています。
 さらに、受動喫煙に安全なレベルはない。換気、空気清浄装置、禁煙区間の限定、いわゆる分煙などの工学的対策は、受動喫煙防止にはならないとまで言い切っています。 受動喫煙をマナーで防ごうとする向きもありますが、もはや受動喫煙は迷惑というレベルのものではありません。 国際的には、受動喫煙は危害であり、多くの無辜の民を死に至らしめるものという認識です。
 

 本市においては昨年の入込観光客数は約1,200万人となり、5年連続して過去最高を更新しています。外国人観光客も初めて100万人を突破しました。このような状況の中で、国際平和文化都市の象徴であり、被爆者の聖地である平和記念公園に4箇所とはいえ、喫煙できる場所があることの理由の説明ができるでしょうか。長崎市平和記念公園は平成21年4月から罰則付きの禁煙となっています。今回の改正案は喫煙を全面的に禁止しようとしているのではありません。平和記念公園で喫煙したければ、道路一本、橋ひとつを渡った喫煙可能な場所で喫煙してくださいとお願いするものです。平和記念公園には妊婦や子供が通ります。修学旅行の学生も多く訪れます。地方政府としての広島市、そしてその議会を担うわれわれには、彼らを、そして広島市民を受動喫煙から守る義務があります。喫煙する権利が、受動喫煙という健康被害から市民を守るという公共の福祉に優先することはありえない。以上の理由でこのこの平和記念公園の禁煙化をめざす改正案に賛成いたします。

 
 討論終えるにあたって市側に苦言を呈しておきたいことがあります。それは、広島市長が交わした覚書です。今回の条例改正を進めてゆく中で、この覚書が論点になりました。この覚書とは2年前の平成26年7月16日に、広島市長、JT広島支店長、中国たばこ販売協同組合連合会会長の3者で交わされたものです。内容を簡単に述べます。 JTは、中国たばこ販売協同組合連合会に対して喫煙所を無償で譲渡し、協同組合連合会はこれを無償で広島市に譲渡するものです。広島市はこの喫煙所を5年間継続して設置することとなっています。さらに広島市はこの5年間はもとより、その経過後であっても、喫煙所の譲渡、分解、改造、移転、撤去等の処分又は供用停止を希望する場合は他の2者に対し、3か月前を目途に事前に書面により通知し、3者で協議することとなっています。わたくしは、この覚書について先の6月定例会の建設委員会で質問しました。答弁では、この覚書は議会に報告されていないこと、5年間の設置期間中であっても協議ができることが確認されました。
 この覚書は議会にとっては頭越しに交わされた密約です。現に、この覚書のために条例改正の施行日まで1年半という長きを設定せざるを得なかったことは否めない事実です。こうした覚書は二元代表制の意義を危うくさせるものであり、軽々に交わすべきものでないことを指摘しておきます。
 さらに、この喫煙所の設置自体がたばこ規制枠組み条約第13条に違反しています。枠組み条約の第13条には、たばこ広告、販売促進、スポンサー活動の禁止が謳われています。そのガイドラインでは、寄附行為は、たばこ製品とたばこの使用を直接的、あるいは間接的に促進奨励するという目的、効果あるいはそれらをもたらす恐れがあるので禁止すべきであると記されています。喫煙所の寄付を受けることは明らかな条約違反であることも指摘して、討論を終えます。