広島市議会議員(安芸区)

歳を取ると尿が近くなる理由

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。

 わたくしの専門分野は泌尿器科なので、よく「歳のせいか尿が近くなった」との言葉を聞きます。確かに加齢により若い頃より尿が近くなる人がほとんどです。わたくしも例外ではありません。なぜ、加齢によってで頻尿になるのでしょうか。
 いくつか原因があります。まず、膀胱の伸展性が悪くなることが挙げられます。膀胱は単なる筋肉の袋ですが、その壁の筋肉が硬くなってしなやかさを失い、十分に尿をためることが出来なくなります。

 原因の2番目は、前立腺肥大症です。前立腺は膀胱の下に接している男性特有の臓器です。正常ではクルミ大で、ハムのように弾力性がります。これが加齢によって、次第に肥大して硬くなります。すると、膀胱を下から突き上げる格好になります。膀胱の底の部分は過敏な場所です。膀胱炎で頻尿が起こるのは、炎症によってこの部分が刺激されるからです。前立腺肥大によって膀胱底部が刺激されて頻尿が起こります。言うならば、前立腺肥大症による頻尿は男性の宿命です。
 もう一つの原因として腎機能の低下があります。正常な腎臓には水分の再吸収という機能が備わっています。言うまでもなく腎臓は尿を作る臓器です。腎臓で血液を濾過し、老廃物を尿として対外に排出します。血液を濾過してできる尿がすべて体外に捨てられるわけではありません。腎臓で作られる最初の尿を原尿と言いますが、その量はなんと1日に200リットルです。原尿の水分の99%や糖分、たんぱく質などの重要な成分を再吸収して、最終的には1日に2リットル程度の尿が排泄されます。この再吸収の能力が加齢によって低下します。つまり、若い時の尿はしっかりと濃縮されていますが、高齢になると薄い尿になって頻尿が起こるのです。
 ちなみに、大量出血や急激な血圧低下の時に、体は最も大切な脳を守るために血流を調整します。最も犠牲的精神を発揮する(無理やりさせられる?)のは皮膚と筋肉です。顔面や手足が蒼白になり冷たくなるのはこのためです。臓器として犠牲になるのは腎臓です。そのような場合には救命し得ても、のちに腎不全を起こすリスクが高くなります。血圧低下が長引くほどリスクは高まります。懸命に1日に200リットルも原尿を作り、大部分を再吸収し、命の危険がある時には率先して犠牲的精神を発揮する腎臓が愛おしく思えませんか?