いい顔、ふやそう。沖宗正明です。昨日はまさに、春の嵐。強いけれど心地よい風でした。
昨夕行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチはあまりにもひどいものでした。結果はチャンピオンのルイス・ネリの2ラウンドTKO勝ちでした。前回は、山中が少し打たれたときにトレーナーの判断でタオルを投げ込み、山中にとっては不本意な負けとなった経緯があります。山中としては満を持しての雪辱戦でした。しかし、前日の計量でネリは2.5kgの体重オーバーでした。2時間後の再計量で1.4kg落としましたが、バンタム級の体重のリミット54.6kgを超えていました。計量後はしっかり飲食するため、試合までに2〜3kg増えるのはよくあることですが、計量前にこれだけの体重差があれば、パンチの破壊力が大きく違います。試合当日のネリの体重は60kgを超えていました。バンタム級より3〜4階級重いクラスに相当します。これだけの体重差があれば勝負になりません。ネリはタイトル剥奪となりましたが、山中には気の毒な結果でした。
13連続防衛を果たした具志堅用高は、体が小さかったため、最軽量のフライ級では苦戦していました。幸いにもその下にジュニアフライ級が創設されたため、まさに水を得た魚のように勝ち続けました。それほどボクシングにおける体重差は大きいものです。減量を怠り、試合を汚したネリには大きなペナルティが課せられるべきでしょう。減量について私が記憶しているのはジュニアライト級のチャンピオン、ガッツ石松が世界タイトルマッチを迎えるにあたって、なんと17kgも減量しました。体質なのか怠慢なのかはわかりませんが、17kgとは凄まじい苦痛でしょう。
ところで現在世界チャンピオンは何人いるかご存知ですか? 階級は最軽量のミニマム級から最重量のヘビー級まで17階級あります。しかもWBC,WBA、IBF,WBOの4団体があり、それぞれに各階級のチャンピオンを認定しています。単純に合計すれば、68個のチャンピオンベルトがありますが、統一チャンピオンもありますので、実際にはチャンピオンは68人以下です。さらに、スーパーチャンピオン、暫定チャンピオンなどもあり、混乱します。
ファイティング原田の時代にはジュニアクラスもなく、団体も一つの時代です。世界チャンピオンはわずかに8人しかいませんでした。その時代にフライ級とバンタム級のチャンピオンとなり、さらに3階級目のフェザー級のジョージ・ファメションを敵地オーストラリアで2度ダウンさせながらジャッジはレフェリー1人という変則な試合だったために引き分けとなりました。それだからこそ今でも世界中から尊敬されています。当時はまず、日本チャンピオン、東洋チャンピオンを経て世界へ挑戦することが必須でした。現在の日本人の世界チャンピオンの中には当時なら東洋チャンピオンにすらなれなかったような選手もたくさんいます。