広島市議会議員(安芸区)

渡哲也の凄まじい演技=仁義の墓場

 いい顔ふやそう。沖宗正明です。今日も我が家のカエルは世間を超越したような威風です。相手がいなくても別に気にする様子もなく飄々と生きていることから、家内はこのカエルを「昇太」と名付けました。別に春風亭とは関係ありませんのでお断りしておきます。

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 先日、久しぶりに映画「仁義の墓場」を見ました。1975年の東映映画で監督は深作欣二です。主人公は実在の人物、石川力夫です。とにかく仁義とは程遠い無茶苦茶な生きざまです。親分(ハナ肇)を切りつけて重傷を負わせ服役したのち、10年の関東所払いを受けます。しかし、出所後、密かに東京に舞い戻ってきます。それを庇ってくれたのは兄弟分(梅宮辰夫)でしたが、行き違いから梅宮を襲い重傷を負わせます。それでも足らず、さらに数日後にも襲い、射殺します。最期は府中刑務所から飛び降り自殺で幕を閉じます。自死する前に独房の壁に書いた辞世の句は「大笑い 三十年の馬鹿騒ぎ」でした。

 

 身売りさせられてもなお、石川に尽くす女性(多岐川裕美)の健気さも涙を誘います。結核で胸を患った身でありながら、石川の保釈金を作り、手首を切って自殺します。抵抗しながらも次第に渡に惹かれる女心を見事に演じています。

 

 そのころ石川はすでに重症の薬物中毒になっており、破天荒さがさらに激しくなります。いつも多岐川裕美の骨壺を持ち歩きます。死を予感したのか、墓石屋に墓石を頼んでいます。自分を破門した親分を訪ね、一家を起こすので金を出せと迫ります。このとき、骨壺から骨をつまみ、うつむいたままゆっくりとバリバリとかじります。凄まじいまでの迫力です。誰もその気迫に言葉も出せません。渡の顔は痩せこけ、眼の下には隈が現れています。眼つきはまさに薬物中毒のそれです。相当のダイエットをしたのでしょう。ラストシーンでは石川の墓石が映ります。側面に掘られた「仁義」の二文字が哀愁を感じさせます。仁義の墓場は渡哲也の代表作の一つであることは間違いないでしょう。