広島市議会議員(安芸区)

被差別の食卓~フライドチキン、キャットフィッシュ・・・・

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。


 

 被差別の食卓(新潮新書)を読み終えました。筆者自身が大阪の被差別部落出身者なので深い考察があり、興味をそそられる内容でした。

 アメリカ黒人のソウルフードは奴隷たちが工夫した料理です。その代表例が

フライドチキン、キャットフィッシュ(なまず)の油揚げ、BBQポークなどです。フライドチキンは農場主が食べ残した鶏の手羽先や足の先っぽ、首などをディープフライにしたものです。長い時間をかけて油で揚げると骨まで柔らかくなり、骨ごと食べられるようになることから奴隷たちに広まりました。

 ブラジルの国民的料理であるフェジョアーダは豚の内臓、耳、鼻、足、尻尾などを豆と煮込んだものです。黒人奴隷の料理がオリジンです。

 日本では流浪の民がジプシーと呼ばれますが、ヨーロッパではロマと呼ばれます。ブルガリアイラクで、そのロマが好んで食べるのがハリネズミです。そのためハリネズミは「ロマの豚」と呼ばれます。被差別民族であるロマは独特の「浄と穢」に対する信仰を持っています。ロマ以外の人間が作ったものは全て穢れているとの考え方です。そのため、例えばロマは乞食であっても他人の残飯を口にしないとされています。体を舐める猫は穢れを内部に取り込むとして敬遠されます。蛇も、他の動物を穢れたまま飲み込むとして嫌われます。

ハリネズミにはブタ顔と犬顔があるそうです。

 

 ネパールはヒンズー教の国ですが、インドと同様にカースト制度があります。サルキと呼ばれる最下層の不可触民は死牛馬の処理と皮革の加工を生業としてきました。ネパールでは牛肉料理自体がタブーなのでサルキの牛肉料理自体がソウルフードだといえます。

 日本のさいぼし(牛肉を天日でカチカチになるまで天日で干したもの)、あぶらかす(牛の腸を油でカリカリに上げたもの)などは多くの被差別の民の共通料理として伝わっていると筆者は述べています。

 さらに筆者は、サルキと日本の被差別部落の共通性に着目し、カースト的な考え方が中国や朝鮮を経由して日本に輸入された可能性が高く、サルキは日本の被差別部落のルーツではないかとも述べています。さらに、インドから西方へ移動していった被差別民族がロマになったのではないかとも述べています。まさに、「食は文化なり」を改めて実感させる書でした。