広島市議会議員(安芸区)

抱腹絶倒。「はじめての八十歳」、「テンショク」に当てる漢字は?

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 
 久しぶりに本を読んで大笑いしました。山藤章二の「はじめての八十歳」です。最初のページから大笑い。さすが江戸っ子で落語に造詣の深いエッセイストです。抱腹絶倒、思わず拍手したくなるエッセイの連続です。「入院中に八十歳の誕生日を迎えた。仕事をしていない状態の年寄り、というのを身をもって体験した。同時代人たちが次々とあの世に逝く。あっという間に逝く。ドサクサに紛れて私も逝きたかったが叶わなかった。とり残された私はあせった。老いの淋しさを忘れられる趣味はない。旅行は脚が不自由だから駄目、寄り合いはもともと好きじゃないから駄目、盆栽は面倒くさいから駄目、イヌネコは好きじゃない、笑芸は大好きだったが、昨今の若手相手の笑いは喧しいだけで駄目、ひとつずつ消してゆくと、楽しみを与えてくれるものは皆無と気付く。えらいことになった。余生をどう過ごそう。」、「人生は砂時計。砂が落ちはじめたら、もう果てるまで見守るしかない。そう思って自分の余命のことを考えたら、残された砂はあとわずか。即席麺が出来上がるのもそろそろの時間だ。」こんな文章が際限なく続きます。全く暗さを感じさせません。

 なるほどと納得させられたのは、「テンショク」という音にどういう漢字を当てるか?という問いです。皆さん、いかがですか?わたくしなら「天職」です。しかし、若い人たちの多くは「転職」だそうです。山藤は、「今どきの若い者にとっては、職業というのは月給を得るための手段であって、拘束されるなどもっての外、という人生観が主流である。と喝を入れます。同音異語が多いから日本語は難しいと外国人は嘆くが、だからこそ日本語は面白くて遊びに適しているのだ。とも述べています。とにかく面白く、落語的センスにあふれたエッセイ集です。ご一読あれ。