広島市議会議員(安芸区)

広島西飛行場の廃港が決まりました。

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 寒の戻りではありますが、いよいよ春です。


 3月9日本会議で「広島シティ空港条例の設置」が否決され、広島西飛行場は廃港となり、ヘリポートとしての後利用が決まりました。わたくしは一旦市営化したうえで、1年間市民の議論を高めて結論を出してもよかったと感じました。議論を重ねて、経営が無理なら廃止すべきでした。以下はわたくしの本会議での討論です。

 
第38号議案広島シティ空港条例の制定に賛成の討論を行います。
現在のような会派制の下では、討論を聞いた上で表決の態度を決めたり、変更する議員は理論上あり得ても実際にはあり得ません。今回のわたくしの討論は、議員の考えを変えようとする点においては意味を持たないかも知れません。しかし自らの政治的立場を明らかにし、それを議事録に残すために討論を行います。

昨日の予算特別委員会で、わたくしはフェデリコ・フェリーニ監督の映画、「道」のラストシーンを思い出しました。野卑で粗暴な大道芸人を演じるのはアンソニー・クイーン。軽い知的障害を持っていて、笑顔が魅力的な女性ジェルソミーナを演じるのはフェリーニ監督の夫人であるジュリエッタ・マシーナです。ジェルソミーナが重荷になったクイーンは、とある田舎町で彼女を見捨てます。何年かたって、その町を訪れたクイーンは彼女が死んだことを知らされ、失ったものの大きさを思い知らされます。そして、クイーンは砂浜に跪いて拳で強く砂を叩きながら号泣するラストシーンです。
後々、市民が西飛行場という大きなものを失ったことを後悔することがないように祈っています

わたくし自身、すこし前まで西飛行場の役割は終わったと考えてきました。それは、県と市が共同で運営するという限りにおいてでした。しかし、市営化という新たな考え方が出たことで見方が変わりました。これを「バカの一つ覚え」と対極にある「君子は豹変する」ことだと思っています。

ヒロシマオリンピックについての議論では寄附金980億円の見通しがしばしば問題になりました。確かに、この寄付金を確保する担保はありません。しかし、担保されなくても端から否定するのではなく、可能性を探るのも議会の役割であり、責務ではないか。
ただ、「できるわけがない」とか、「土台無理な話」の一言で片づけるべきではない。議会はあらゆる可能性を探り、市民に示さなくてはならない。議会は可能性を封じてはならない。今回の広島シティ空港条例を否決し、関連予算を削除することは、可能性を封じることに他ならない。

昨日の質疑で山田議員は、新市長が決断すれば空港として再開することは可能である答弁された。
しかし、きょうシティ空港条例が否決されれば、県は4月から廃港の手続きに入る。廃港となった場合、新市長の判断を仰ぐことはできない。また、空港を再開するとしても、市議会と県議会の双方が新たに空港設置条例を成立させた上で、国から設置管理者として認可を受ける必要が生じる。現実問題として、そのような時間的余裕は残されてはいない。したがって、修正案の提案理由で述べられている「整備計画策定等に係るものは政策的経費であり、新しい市長の判断の下に計上すべきものである」という論理は破綻していると言わざるを得ない。シティ空港条例の否決は、本市にとっては、もはや後戻りのできない、まさにルビコン河となる。

わたくしが新米議員のころから尊敬申し上げ、残念ながら今季限りで勇退される柳坪 進議員は、アジア大会という途方もない稀有壮大な夢を提案し、結果として実現させました。アジア大会開催にはあれだけの時間をかけたように、夢を実現するには膨大な時間を要します。しかし、夢をつぶすのは一日あれば足ります。「広島には夢がない」と常々唱えてきた議会が自ら夢をつぶすことがあってはなりません。

政策をギャンブルにしてはならないのは自明の理です。しかし、シティ空港に関しての1年間の検討は決してギャンブルではありません。その予算も必要経費です。検討すらさせないのは議会としてあるべき姿ではありません。1年間、市営空港としての可能性を検討し、運営が無理と判断するなら、議会が止めを刺し、介錯する意味で廃止条例を出せばよいだけのはなしです。
わたくしは平成21年9月議会の一般質問で、西飛行場が羽田の発着枠を獲得するのは容易ではないと申し上げました。しかし、近年、航空業界の潮目は明らかに変わりつつあります。九州新幹線東北新幹線が開通し、航空機の利便性は相対的に低下しています。当然のことながら、関空神戸空港から九州への発着枠や東京から東北への発着枠は余ってきます。北陸新幹線についても同様のことが言えます。したがって、広島西飛行場からの東京便復活の可能性も相当に高まってきます。

また、中四国でただひとつの「被災地外広域搬送拠点」としての西飛行場を廃止することは防災上大きなリスクを負うことになります。

いま、広島は距離的にはともかく、時間的には東京都心から最も遠い都市のひとつになりつつあります。例えば、宮崎や熊本よりも時間的に都心からはるかに遠い存在になっています。議会はこれまで企業の広島支店が逃げ出すのは行政の怠慢であると非難してきました。それなら、本市に支店を出すモチベーションを高め、ビジネスマンの広島への出張が楽になるような方策を考えなければならないはずです。そのひとつが広島シティ空港である可能性は十分にあります。それをつぶすような議会であるなら行政の怠慢を非難する資格はない。以上申し上げて討論を終えます。