広島市議会議員(安芸区)

難治性の進行性胃がんの告知を受けました

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 今日から16日までの会期で6月定例会が開かれました。しっかり議論します。


 5月29日と昨日の2日間に亘って緩和ケア研修会に参加しました。2日とも午前9時から夕方までという非常にハードなスケジュールでしたが、わたくしにとって有意義な研修会でした。
 最も印象に残り、衝撃的であったのは、ロールプレーイングでした。これは、3人がグループになり、それぞれが医師役、患者役、観察者役になります。医師は、難治性の進行がんであることを患者に伝えます。患者はその告知について疑問や治療法について質問します。観察者は、両者を批評します。
 1回が20分です。まず、最初の6分間で役作りをします。医師役は、たとえば患者が肺や肝臓に転移のある進行性の胃がんであることとし、受診の経過などを設定します。患者役は、自ら名前や年齢、職業、家族構成などを設定して、感情を移入して役になりきります。ここで患者役は、がんである疑いは抱いていますが、進行がんであることはまったく予想していないという前提です。次の7分間で医師役と患者役が、がん告知のやり取りを行い、最後の7分間で3者がそれぞれの感想を述べます。
 始める前に講師が言った言葉がショックでした。「途中で気分が悪くなったら、即刻中止してください。カウンセリングを行います」。それほど、厳しいロールプレイです。


 まず最初にわたくしは患者役になりました。49歳、会社役員、妻と中学生と小学生の子供2人、家のローンを抱えているという設定です。医師役から進行性の胃がんであることを告げられます。「進行性のがんとはどういうことですか?」と質問し、しばらく沈黙の後、余命や治療法や聞きました。驚いたことに、役だとわかっていながら、次第に脈が速くなってきました。家族のことが頭をよぎり、平静さを失いかけました。開始前の講師の言葉の意味がそのときに理解できました。
 終わっての率直な感想は、患者役を演じましたが、いくつかの質問をするだけ平静でいられたかどうか疑問だということでした。


 次に、わたくしは泌尿器科医として、肺と腰椎に転移がある前立腺がんを告知する設定にしました。
 わたくしが大学病院に勤務していたころは、患者にがんを告知するかどうかの論争が行われていましたので、告知の経験はありませんでした。開業医は、がんの疑いがある患者は大病院に紹介するので、告知をすることはありません。
 患者に死に等しい厳しい宣告をすることがいかに大変なことかを改めて痛感させられました。この中で、オープンクエスチョン、つまりイエスかノーで答えられるような質問でなく、患者が自分の考えを答えるような質問をするように指導を受けました。また、患者の沈黙を受け止めるようにも指導されました。告知の7分間が途方もなく長い時間に感じました。これはグループの3人ともに共通した感想でした。
 そのあと、絶対にしてはならない告知の仕方と、模範的なそれのビデオの供覧がありました。


 これからの高齢化社会にあって、緩和ケアはさらに大きな位置を占めます。人間として、自分の人生の意味を見出して生を終えることが尊厳死だと、わたくしは考えています。延命治療を拒否することや安楽死尊厳死とは考えていません。それには、宗教家の役割も必要になるでしょう。
 帰途、激しい疲労感とともに、充実感も味わった研修会でした。