広島市議会議員(安芸区)

日本の臓器移植の問題点

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 今日も快晴の気持ちよい朝です。今朝の中国新聞臓器移植法改正案が今国会で採決される可能性が強まったことが報じられていました。今回の改正は移植の要件緩和が目的で、臓器提供の年齢制限を設けないか年齢制限を引き下げる案と脳死の定義を厳格化する案です。わが国の臓器移植法は1997年に成立し、脳死での臓器移植には本人の書面による意思と家族の承諾が必要です。また15歳未満の人は臓器提供ができません。こうしたことから、日本国内での臓器移植は相当に高いハードルがあるのが実態であり、海外で移植を受ける人が急増しています。これに対して世界保健機構は渡航移植の規制を打ち出す方針です。3月18日に行われた市民公開講座、「日本の臓器移植を考える」はわたくしにとって医師としても議員としても大変に勉強になりましたので少しくご紹介します。
 この公開講座広島大学第2外科教授、大段秀樹先生の総合司会で行われました。
 講演者は3人で、
1.「米国での肝移植の現状」 マイアミ大学移植外科、西田聖剛先生
2.「いのちの希望につながれて」 肝移植レシピエント、加藤 望さん
3.「決断 河野父子の生体肝移植」 衆議院議員河野太郎先生です。
 米国では、1988年から2008年までの21年間に10万2030人から肝臓が提供されています。そのうち9万8285人は死亡後(脳死または心臓死)の臓器提供で、3745人は生体からの提供です。2007年だけでも6494人の肝移植が行われています。国土の広い米国では11のネットワークを作って情報公開された公平な臓器提供が行われています。また、外国人に対する移植には5%の制限が設けられています。西田先生がヘリコプターで飛び回っているスライドも映写されました。これに対して日本ではこれまでのすべての肝移植の合計が約6000例しかありません。日本移植学会理事長の寺岡 慧先生からは、脳死と判定されても家族から臓器提供の承諾が得られず、約1ヶ月後の心臓死を待ったために、助かる命が失われた現状がコメントされました。
 米国で肝移植を受けた加藤 望さんは牧師です。加藤さんの記事は4月6日に「2回目の誕生日」と題して中国新聞に掲載されましたのでご覧下さい。生体からの臓器提供の意思を示してくれていた身内からの移植が困難になったため、多くの人の善意の募金(約4000万円)で米国で肝移植を受けました。臓器提供者はメキシコ人だったそうです。病院に隣接して、移植を待機する患者用のアパートがあり、「Twice Blessed House(二度の祝福を受けた者の家)」と呼ばれています。手術には優秀な日本人医師が立会い、現場には日本の医療器械がたくさんあったそうです。加藤さんは「移植を受ければ助かったのに、生きられなかった子どもたちを大人は忘れてはいけない。日本国内で受けられるように努力する」と結びました。
 河野太郎先生は、自ら父親に肝臓を提供した経験を語り、臓器移植法の改正に取り組んでいる様子を語りました。
最後に大段秀樹教授から「日本の臓器移植のレベルは世界でもトップクラスであるにも関わらず、法の不備のために存分に技量を発揮できず、助かる命を救えない現状がある。臓器移植法の改正に皆様のご理解を得たい。また、臓器移植のドナーカードの普及に努めたい。」とのコメントがありました。臓器移植の現場の献身的な努力に感銘を受けた公開講座でした。
 わたくし自身、10年前に「くも膜下出血」で先妻を亡くした経験があります。最期は脳死状態だったと思われますが、ドナーカードを持っていなかったために脳死判定ができませんでした。救える命を救いたいのは共通の思いでしょう。改めて生と死について考えさせられました。
 日本臓器移植ネットワークのホームページは下記をご覧下さい。http://www2.jotnw.or.jp/