広島市議会議員(安芸区)

「傘かしげ」と「稚児しぐさ」

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 今朝は朝から雨模様です。子どもの頃は雨の日には外に出られなくても屋内でも楽しみを見出したものです。下校途中で捕ったカタツムリを窓ガラスに貼り付けて動きを観察したり、友達と畳の上でビー玉で遊んだり、それなりに楽しみました。数10センチの高さから傘をパラシュート代わりに飛び降りたこともあります。多くの場合、傘は上に向いて「お銚子」のように変形し、叱られたものです。
 さて、「傘かしげ(かさかしげ)」という言葉があります。「傾ぐ(かしぐ)」という言葉は「傾ける」とか「傾く」という意味ですが、現在では耳にすることはほとんどなくなりました。わたくしも聞くのは落語の世界だけです。「傘かしげ」とは雨の日に狭い路地を歩くときの心遣いで、傘を傾けるという意味です。これは他人と路地ですれ違うとき、お互いに傘を相手側ではなく反対側へ傾けたり、傘を少しすぼめることです。相手に雨水がかからないように、という思いやりの気持ちを表した言葉です。美しい日本語です。これからの梅雨の季節にぜひ心掛けたいものです。
 「傘かしげ」に対して「稚児(ちご)しぐさ」という言葉があります。稚児とは幼い子どものことです。江戸の人々は人に迷惑をかけるような子どもっぽい振る舞いを「稚児しぐさ」として戒めました。公共の場で大声で携帯電話をかけたり、電車内で化粧したり、地べたに座り込んだり、人ごみで喫煙したり、現在の「稚児しぐさ」の氾濫を粋な江戸っ子が見たら眼を回すでしょうね。