広島市議会議員(安芸区)

平成22年度決算認定に反対しました

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。


 昨日、一日の会期で臨時議会が開かれました。この臨時議会は平成22年度決算の認定を行うか否かを問うための議会です。10月24日の決算特別委員会では、すべての会計決算は認定されました。ただし、委員会での賛否は最終決定ではなく、あくまで本会議が議会としての意思の最終決定となります。過去には、委員会の賛否が本会議で覆されたこともあります。


 さて、今回の広島市の会計決算は、決算第1号から第22号と、事業会計である水道事業決算、下水道事業決算、病院事業決算などに分かれています。決算第1号がもっとも重要な一般会計です。第2号から第22号は特別会計で、第2号は住宅資金貸付特別会計、第3号は母子寡婦福祉資金貸付特別会計です。皆様に身近なものとしては、第6号の広島市民球場特別会計、第9号の老人保健特別会計、第10号の後期高齢者医療事業特別会計、第11号の介護保険事業特別会計、第12号の国民健康保険事業特別会計などがあります。それぞれ独立した会計として別々に審査されます。


 昨年度の決算審査は2002年から2009年度の8億5000万円の不適正経理が明らかになったため、平成21年度決算はすべての会計について不認定としました。そこで昨年11月から市役所内で再発防止策に取り組みました。そして、その効果を検証するために、消耗品費について昨年6月と今年1月の2か月分について、旅費については6352件のうち643件(10.1%)について随時監査が行われました。結果は旅費については不適正経理は確認できませんでしたが、消耗品費については6月分で58件約80万円の不適正経理が認められました。1月分については認められませんでした。先の会計別で言えば一般会計と下水道事業会計で不適正経理が確認されたことになります。


 今回、決算を認定した会派の主張を要約すれば、消耗品費については今年1月分の調査結果において不正が確認できなかったことで、再発防止は着実に実行されており、昨年11月以降は適正に処理されていると判断したとのことでした。彼らは、昨年の決算審査で最も強硬に認定に反対していましたのに、今回は賛成(決算の認定)しました。


 わたくしは、反対討論に立ちました。その趣旨は、11月以降不正が確認できなかったからといって、それまでの不正が許されるわけではない。通年でみれば不正があったので、決算を認定できないというものです。監査委員の報告書でも「不適正な経理処理は地方自治法や関係法令に反するものであり、市政に対する信頼を著しく損ねる行為である」と切り捨てられています。
 また、分割発注という手法も改善されていません。これは、一括で発注すると財政局の決済などに時間がかかるなど面倒であるため、1件を5万円以下に分割して発注するものです。割高な購入になる可能性もあり、限りなく不適正といえるものです。


 我々の会派(市政改革クラブは)昨年度と同様にすべての決算の認定に反対しましたが、賛成多数で認定となりました。市民の皆さんはこれに納得するでしょうか?わたくしの討論は、近いうちに広島市議会のホームページに録画中継されますのでご覧ください。
 「広島市議会トップページ」、左側の「本会議・委員会」、上段右側の「議会中継」、左側の「本会議録画中継」、「平成23年第5回臨時会」から11月2日を開けばご覧いただけます。


 以下は私の討論の要旨です。

平成22年度広島市各会計歳入歳出決算、第1号から第22号、
平成22年度広島市水道事業決算など企業決算3件、
並びに平成22年度及び23年度久地財産区会計歳入歳出決算、すべてを不認定の立場で討論を行います。

 平成21年度の決算特別委員会では、不適正な経理処理について厳しい指摘があり、「不適正な経理処理の再発防止を求める決議案」が可決されました。   
今回の随時監査でも、一部の抽出とは言え、消耗品費で不適正な経理処理が明らかになりました。

 それにもかかわらず、先月24日に開催された平成22年度決算特別委員会では、すべての決算が認定されました。その理由は、消耗品費については今年1月分の調査結果において不正が確認できなかったことをもって、再発防止は着実に実行されており、昨年11月以降は適正に処理されていると判断したとのことでした。

 昨年度の決算特別委員会では、調査を実施されなかった平成17年度、19年度、20年度についても全て調査を行えと迫った議会が、今回は消耗品費については昨年6月と今年1月のわずか2カ月分だけで、さらに旅費については6,352件中の643件、わずか10.1%の抽出だけで了解している。これでは針の穴から天を覗くようなものであり、それでよしとするとは、同じ議会の態度とも思えない。

 また、不適正経理の5類型には相当しないが、分割発注も相変わらず横行している。分割発注については、随時監査結果報告書でも、「検査体制の変更後においても一部の所属において行われていたことから、分割発注の防止という観点からは、再発防止策が効果をあげていないものと考えられる」とまで指摘されている。
中にはわたくしが総括質疑で指摘したような割高な購入もあった。

 さらに、経理担当職員事務実態調査では、帳簿突合調査により判明した不適正な処理の一部が申告されていないことから、不適正な経理処理が漏れなく申告されているものではないことも指摘されている。

 これでは、決議案を可決した議会に対する挑戦ではないか。本市議会は明らかに蔑にされていることを何とも思わないのか。

 今年の第1回定例会での、平成21年度決算についての討論の中で、ある議員は、帳簿の突合等による調査は、すべての年度において行われたものではなく、また、平成21年度を含む調査の行われた年度についても、限られた費目のみの抽出となっており、このような調査報告内容では到底、本市の不正経理の全貌が明らかになったとは言えない。と述べた、不適正な経理が存在し、しかもその全容が明らかになっていないと思われる以上、我が会派としては本決算を認定することはできない。と結論している。

 同様に、別の議員は、特定の費目だけの調査の実施では、いったいどの程度の不正経理が行われていたものなのか、実態はわからない。それが明確になっていない以上、すべての会計の決算について認定することは到底できるものではない。と述べている。さらに、全容を明らかにしようとしない市当局の姿勢、なおざりな調査によって幕引きをしようとする市当局の対応には憤りを感じざるを得ないと糾弾している。その上で、わたしたちは監査委員の審査意見書を参考にしながら審査していますので、監査委員の独立性を確保しなければならないとまで述べている。

 お二人とも頗るまっとうな討論をされた。それに我々も賛同した。
このような反対討論を行っていながら、今回はなにをもって再発防止が着実に実行されていると判断できるのか。
同様に、なにをもって、1年間を通じて不適正経理が行われた平成21年度とは異なり、昨年11月以降は適正に処理されたと判断できるのか。
 今回の決算を認定することは、討論の趣旨と明らかに整合性がとれない。

 さらに敷衍すれば、議会選出のふたりの監査委員は随時監査結果報告書の中で、不法な支出であると断定しておきながら、本決算を認定することは自己矛盾ではないか。監査委員としての立場を自ら否定することではないか。議会選出の監査委員の意義も問われている。

 議会は何のために存在しているのか。いつからこんなにも議会は堕落したのか。いつから議会は不正な決算にお墨付きを与えるような無能な存在になり下がったのか。いつからことの是非の判断ができないような議会になったのか。こんな決算審査をするのなら、決算特別委員会の名に値しない。無用の長物だ。
議会が自らその権威を貶めていることになる。

 百歩譲って、年度途中から不適正経理がなくなったとしても、そのことをもってそれまでの不適正経理が免罪される理由にはなりえない。
 要は、年度内に不正があったかなかったかが問題である。認定するのであれば、今年度の決算を審査し、年間を通じて不正がないことを確認してからでも遅くはない。

「法律に違反し、市政に対する信頼を著しく損ねる行為である」とまで指摘された決算を、行政を監視すべき議会が認定するとは、正気の沙汰ではない。踏み込んで言えば、狂気の沙汰だ。広島市議会の無能を満天下に知らしめることになる。

 広島市議会は、決議案を可決したにもかかわらず行政から蔑にされ、法律に違反した決算を認定したと、後の世まで日本中の笑いものになる覚悟があるのか。本決算、とくに不適正経理を指摘された一般会計と下水道事業会計決算を認定しようとしている議員には、いまその覚悟が問われている。