いい顔ふやそう。沖宗正明です。
久しぶりの戦慄でした。アフリカ象密猟の実態を暴いた「牙」です。学名はアフリカゾウですが、ここではわかりやすいアフリカ象と書きます。脅迫や暗殺の恐怖と闘いながら取材した内容だけに濃いものになっています。密猟によってこのままのペースで進めば、わずか十数年でアフリカ象が地球上から消滅します。それに加担している元凶が、美術工芸品としての象牙を珍重する中国と日本です。日本は世界の象牙の約4割を消費する「象牙消費大国」なのです。
1984年には約474トンもの象牙が日本に陸揚げされています。この数字は当時アフリカで生息していた野生象の半分に相当する約72万頭ものアフリカ象が日本人の印鑑などのために命を奪われたことを意味します。
ヤフーオークションでは、2012年からわずか3年間の間に、合計803本(合計重量約4トン)の全形象牙が落札されています。全形でなく切断された象牙の落札を加えると落札件数は約1万6500件、総重量は約12トンにも及び、さらに別に約5万5000本もの象牙印章が同時期に落札されています。日本では象牙がインターネットで売られまくっている実情が暴かれました。欧米社会から激しい怒りを巻き起こしたのも当然でしょう。中国での市場は統計がありませんので不明ですが、日本以上であることが予想されます。
オスの象は40歳を過ぎないと生殖能力が十分ではありません。逆に密猟者にとっては、十分に育った大きな牙を持つオスがターゲットになります。年長のオスはあらかた獲り尽されて、現在生き残っているオスは小型で生殖能力が十分でない25歳未満がほとんどです。
我々が思い描くサファリパークは象だけでなく、キリンやライオン、シマウマなどが優雅な姿を見せるものですが、現状は全く異なります。ケニヤやタンザニア、モザンビークの国立公園ではアフリカ象の姿が消えています。
2015年5月のAFP通信には、モザンビークに生息する野生象が過去5年間で2万頭あまりから約1万300頭へと48%減少したことを報じています。同年6月には、タンザニアに生息する野生象の個体数は過去5年間で10万9051頭から4万3300頭に、約6割もの壊滅的現象になったと伝えています。タンザニア南部とモザンビーク北部が密輸象牙の2大産地です。
1940年には500万頭いたアフリカ象は2010年代にはすでに10分の1の50万頭に激減しています。その上、毎年約3万頭が密猟で死に追いやられています。
2014年5月30日に発見されたサタオの死骸は世界に衝撃を与えました(下の写真)。この写真は、いかにひどい密猟が行われているかを物語っています。
あまりにもショッキングな内容が満載なので1回では書き切れません。続きは次回に。密猟の実態や中国の関与について書きます。