広島市議会議員(安芸区)

結核の恐さとマスコミの無知

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 今朝のニュースで気になることがありました。吉本興行のお笑いタレント、「ハリセンボン」の「箕輪はるか」が結核で入院したそうです。入院するということは結核菌を排菌する活動性の結核でしょう。わたくしが見たテレビニュースではすべての番組で、「結核患者と接触しても感染する率は低いし、感染しても発症する率はさらに低いので、さほど心配することはなかろう」という主旨のコメントが出されていました。その無知でいいかげんなコメントには呆れるばかりです。実際に、若者達に結核患者が増えていることをどのように考えているのでしょうか。先日鶏肉からサルモネラ菌が出たときは、ほとんど無害なのにも関わらず、いかにも鶏肉と鶏卵が食中毒の原因になるような報道があり、過剰反応といえるものでした。それに比べて今回のケースは結核菌を撒き散らし、タレントと接触した一般市民や子どもたちに感染の機会を与えた点で相当の責任があり、感染の危険性の少ないサルモネラ弱毒性鳥インフルエンザとは比較にならないほど大きな罪です。このタレントには酷なようですが、その責任は相当に重いものです。もし、役所や保育園で結核が出たら大騒ぎするでしょうに、なぜマスコミは芸能人をこんなにかばうのでしょうか。
BSE騒動以来、日本だけが牛の全頭検査を続けています。高橋はるみ北海道知事は「消費者の理解と納得が得られていない現状においては、北海道単独でも20ヶ月の牛の検査を続けざるを得ない」と述べています。行政としては不要だと思っても、消費者が必要だと思うのなら税金を投入して検査をするということです。このような考え方が多くの市民に支えられて今でも全頭検査が続けられているのです。2006年には牛に下痢を起こす「ヨーネ病」の病原菌に汚染された危険性があるとして、検査もせずに牛乳60万本が廃棄処分されました。2008年、ある食品会社は自社のキャンディーを自主回収しました。このときのコメントは「キャンディーのなかにゴム片が混入した可能性があります。万が一召し上がっても健康には害はありませんが、自主回収させていただきます」というものでした。アメリカではたとえゴム片が混入していても7mm以下なら問題にならないそうですが、この会社は自主回収し、すべて廃棄処分にしました。何たる無駄でしょう。
 欧米なら行政として安全だと判断したら、社会にそれを周知するべきだと考えます。わたくしも欧米の考え方に賛成です。無視できるほどの可能性を盾にいたずらに不安をあおるのは行政としてはあるべき姿ではないでしょう。これでは世論への迎合です。100%安全な食品などありません。わずかな可能性でもあっても許さないのなら、アルコール飲料やタバコも食塩も砂糖すら提供できないことになります。感冒の初期に使われる漢方薬のひとつに麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)があります。この附子(ぶし)は別名「ぶす」と呼ばれます。太郎冠者と次郎冠者が演じる狂言「ぶす」という短編を小学校で習った記憶はありませんか。実は「附子」には猛毒のトリカブトの成分が含まれています。その毒が調合次第では薬になるのです。食品に100%の安全を求める人たちは、これすら認めないつもりでしょうか。
 いずれにしても、今回の結核については、病院を受診しなかった本人も、それをさせなかった周囲も責任は大きいと思います。結核天然痘とは異なり、まだまだ終わった伝染病ではないのです。