広島市議会議員(安芸区)

八丈島事情5 牢内では畳1枚に10人。

いい顔ふやそう。沖宗正明です。
 ゴールデンウィークも今日で終わりです。お疲れが出ませんように。


 時代劇で牢内の様子が描かれることがあります。牢名主が畳を何枚も重ねて眼を光らせ、その両脇にも顔役が並んでいます。新入りは隅のほうで小さくなって膝を抱えているというのが定番です。しかし、実態はそんなに生易しいものではありませんでした。八丈島を訪れたのを機に、「遠島」をキーワードに松本清張の「いびき」という時代短編小説を読み返しました。食事と睡眠だけが楽しみの牢内あって、大きないびきを掻く者は命を取られると聞かされていた主人公の仙太は眠ることができず苦しむ話です。

 その時代の牢は3間×4間の広さで、普段の定員は70人程度です。しかし、無宿人狩りや大量検挙があると、一気に100人を超えることがあります。それぞれの牢には、牢内役人と呼ばれる奉行所公認の特権を持つ役付き囚人がいて、最上の牢名主は見張り畳と称して12枚の畳を重ねて一人で独占します。次いで、一番役、二番役、角の隠居、詰めの隠居、穴の隠居、三番役、四番役、五番役、頭数え役などの役付きが広い場所を取ります。その残りのスペースをその他のヒラの囚人が分け合います。したがって、100人以上ともなれば、畳1枚に10人がひしめくようなことになります。これでは横になることはおろか、手足を伸ばすこともできません。呼吸さえも苦しくなるでしょう。ちなみに、トイレは部屋の片隅にあり悪臭が漂う。そんな場所で食事をすることから「臭い飯」の語源になりました。


 こんな住環境での楽しみといえば、食事と睡眠だけです。やっと眠りについたときに、いびきで睡眠を妨げられることは許されるものではありません。いびき掻きと重病人のうめき声は命を奪われるに十分な理由です。翌朝、役人に小銭を握らせて、病人が死にましたと申告すれば、深く詮索もされずに最下層の乞食たちに死体が渡されます。


 仙太は島に流され、のびのびと眠ることができるようになります。当時は、まじめな(?)囚人は水汲み女と暮らすことが名主の了解のもとに黙認されていたようです。島内でつかの間の幸せを楽しんでいる仙太が、再びいびきで窮地に陥るという結末が待っています。詳しくは原作をお読みください。

購入した本
1.「朽ちるインフラ」 日本経済新聞出版社
 近いうちに、老朽化した橋が必ず落ちると警告します。
2.「違和感の正体」 新潮新書
 民主主義と自由主義について掘り下げた本。エセ民主主義のウソを暴きます。
3.「日本軍兵士ーアジア太平洋戦争の現実」 中央公論新書
 兵士の目線・立ち位置から凄惨な体験を描く。