広島市議会議員(安芸区)

ベトナムの医療事情

 

 

 

 
 
 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 5月13日から19日までベトナムを視察しました。わたくしにとって4回目のベトナムでしたが、大きく認識が変わりました。ベトナムはもはや農業国ではなく、工業製品の輸出国として変貌を遂げています。学んだことのいくつかをご紹介します。


 今日は、医療についてです。5月17日、ホーチミン市の「チョー・レイ・ホスピタル」を訪問しました。この病院は日本の無償援助で1974年に完成しました。1800床の規模を誇り、ベトナム南部で最大の病院です。スタッフは3,412名で医師は708名です。広島市民病院の病床数は743床、医師数は121名ですから、その大きさが予想できるでしょう。
 ベトナム南部の健診、ケアを担当し、ホーチミン医大と連携し、人材の育成にも力を入れています。さらに、JICAの強力を得て国際交流も積極的に行い、2011年には留学生200名を受け入れています。日本とは千葉大、つくば大、滋賀大などと連携しています。心臓血管外科や肝癌の分野ではトップクラスの成績を上げています。また、ベトナムで最初に人工透析を始めています。CTスキャン5台、MR1台、PET1台を備えています。

 
 わたくしがもっとも興味を持ったのは救急医療でした。とくに頭部外傷などの脳外科の分野です。この病院では、日本の脳神経外科に相当する分野を4つに分けていました。脳神経内科、脳神経腫瘍外科、頭部外傷外科、ICU担当の4分野です。毎日100件以上の脳外科手術が行われています。これは交通事故による頭部外傷が多いためです。
 

 上の写真をご覧になると、ご理解できるでしょう。ホーチミン市のバイクの数は多すぎます。数年前にヘルメットの着用が義務付けられました。しかし、大卒の初任給が1万円なのに、本物は4000円と高価な貴重品であり、盗難に遭います。そこでほとんどの人は200円程度の安価なヘルメットを装用しています。ですから頭部の打撲には全く役に立たないのです。毎日熱帯夜のベトナムでは、エアコンのない部屋を出て、家族をバイクに乗せて夕涼みするのが暑さしのぎです。ただ、バイクで走るだけです。ベトナムの若者たちはバイクを持っていないと女性から相手にされません。写真で見るようなバイクの群れの中を歩行者は平気で横切ります。ゆっくり歩くのがコツです。早く走るとバイクはよけることができません。わたくしはホテルの周囲をブラついたとき、あまりのバイクの多さに恐怖感を抱き、わずか10数メートルの横断歩道をしばらく渡れませんでした。現地人の後ろについて、なんとかホテルにたどり着くことができました。
 ちなみに、ベトナムではバイクのことを「ホンダ」といいます。過半数をホンダ製が占めていることによります。ですから、ヤマハ製のバイクもホンダ、中国製のバイクもホンダです。もうひとつ蛇足ですが、メイドのことは「オシン」といいます。かつてのNHKドラマの「おしん」から由来しています。農村部の娘たちは南部の都会や台湾の出て「オシン」をして金を貯め、結婚に備えるそうです。


 頭部外傷専門の病棟の写真を下に掲載します。日本ならICUにいるような患者でも、ストレッチャーに乗せられたまま廊下にあふれています。病室にも10人程度詰め込まれています。もちろんエアコンはありません。民間の医療施設では健康保険が使えないため、どうしても公立の施設に殺到するのです。医師の勤務のハードさは想像を絶するものがありました。当然ですが術後のリハビリにも力を入れていました。当面の課題は、地方の施設でリハビリをできる体制を作ることだそうです。

 

 
 頭にドレーンが入っている患者も。
 
 
 
 手術室にも患者が詰め込まれています。 

 
 廊下側の写真。廊下はベッドで埋め尽くされています。

 
 夕刻を過ぎても患者が殺到する病院の玄関

 
 病院のスタッフ。右から2番目が院長。一番左はJICAの日本人駐在員。