広島市議会議員(安芸区)

コピー商品があなたの生命を危険に曝す

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 「言うまいと思えど今日の暑さかな」


 
模倣品(コピー商品)のマーケットは巨大化し、この四半世紀で100倍になりました。表題はあまりにもショッキングだったかもしれませんが、現実に起こっており、われわれは無関心ではいられません。
模倣品ビジネスは世界で2番目に古いというジョークもあります(最古の職業は売春です)。
模倣品のマーケットは全世界で7000億ドルと推計され、これは世界の貿易額の約1割もの巨大さです。犯罪組織が牛耳り、ルートや資金洗浄の方法も確立されています。巨大化しすぎて取り締まりの手が回らないのです。モグラ叩きに例えられますが、モグラがいっぱいいるのに叩き手が足りない現状です。



われわれ自身も、模倣品を造ったり売ったりする側を非難しますが、いざ自分がそれを買うときには罪悪感を持たないことも問題です。
乾電池の模倣品が爆発した例、偽歯磨きに汚染物質混入していた例も報告されてます。偽物のサングラスは色がついいているだけで紫外線をブロックする機能がありませんから、暗いため瞳孔が開き、却って眼に悪影響を及ぼします。
カナダの有名なダウンジャケットの本物は、ファーはコヨーテの毛ですが、偽物は犬か猫の毛です。寒さを防げませんが、ネットで半額程度で売られています。詰め物はダウンでなく、鳥のくちばしや足が混じっていて、鳥のフンや細菌・ビールスも検出されました。


ポロシャツで有名なラコステはパリで「偽物博物館」を運営して、啓発しています。
16世紀神聖ローマ帝国のカール5世は偽物のタペストリーを作った業者の手を切り落としました。フランス国王のシャルル9世もタペストリーを偽造した者を死刑にしました。19世紀にはルイ・ヴィトンの偽物が大量に出回ったため、デザインを変えました。現在のヴィトン特有のモノグラムはコピーを防ぐためにデザインされたものです。コピーが本物を変えた例です。

問題は自分が知らないうちに偽物を買わされるケースです。自動車部品は専門家でないと見分けられません。車検を受けたとき、交換された部品が本物かどうか疑う人はいないでしょう。しかし、偽物のブレーキパッドが備えられたら命を失うこともある。本来、ブレーキパッドはセラミックスと金属でできていますが、実際に見つかった偽物はおがくずや枯草が混入されていました。仮に事故が起きたとき、ブレーキパッドが本物かどうか調べることもありません。安い模倣品を歓迎してきた消費者が今そのツケを支払わされています。

模倣品の出所としては、ご想像の通り、殆どが中国製です。2012年EU加盟国で摘発された模倣品の3/4は中国製です。中国人社会では模倣品を作る能力が高く評価されます。村中で絵画や書を模造しているケースさえあり、このような社会ではコピー商品を作る工場がその町の雇用の大きな部分を占めています。

世界で流通する医薬品の15%が偽物と言われています。効かないだけでなく、有害なものが出回っています。アジアやアフリカでは半分が偽物という国もあります。
わたくしのクリニックでもバイアグラが効かないという相談がしばしばあります。ほとんどがネットで購入したものです。中国でコンクリートミキサーバイアグラの偽物を製造している映像を見ました。薬を製造する業者、パッケージを担当する業者など細かく分業されているようです。
2006年パナマでは偽の咳止めシロップで350人が死亡しました。2012年パキスタンでは偽物の心臓の薬で112人が死亡しました。本家の中国では偽造薬で毎年30万人が命を落としているといわれています。マラリア薬の1/3は偽物といわれ、ヨーロッパやアメリカでも心臓薬、抗がん剤抗鬱薬が摘発されいます。発展途上国ではチェックが行き行き届かないため、露店で堂々と偽薬が売られています。それを悪徳業者が大量に買い付け、ネットで販売しています。死亡などの重大な副作用が出ても追跡は不可能です。アメリカではがん治療専門病院で偽の抗がん剤が発見されて大問題になりました。わたくし自身、問屋から購入した薬が偽物と考えたことはありません。しかし、医療施設や薬局でさえ、偽薬が混入する可能性は非常に高まっていると言わざるを得ません。


 こんな状況で薬のネット販売を解禁するとは狂気の沙汰です。楽天のようなネット業者が潤うだけです。事故が起きても仲介しただけですから、全て自己責任ということになります。それでもあなたはネットで薬を買いますか?


模倣品が生命を危険に曝すのは薬だけではありません。航空産業も偽造業者のターゲットです。廃棄された部品が再び流通しています。米大統領専用ヘリに使われる直前で分かったこともあります。ボーイング747(ジャンボ)でも不正品が見つかっています。連邦航空局の部品倉庫では39%で偽造の疑いがありました。1995年コロンビアでアメリカン航空機が墜落したとき、現場に真っ先に駆け付けたのは部品業者でした。航空機の中古部品は高額で売れるため、部品を切断して持ち去りました。墜落した航空機の部品が別の航空機に再利用され、現実に我々が乗っている可能性があるのです。
2000年7月25日パリ発ニューヨーク行きエールフランスコンコルドが離陸90秒後に墜落し、乗員乗客全員が死亡しました。離陸時に別の機から落下していた金属片を踏んだためにタイヤが破裂し、その破片が燃料タンクを直撃しました。落下していた金属片はエンジンカバーから脱落したもので不正品でした。最近ではメンテナンスや修理を外国の会社に委託するケースが増えたので監視が完全ではなくなっています。
2012年上院軍事委員会が置くなった1年間の調査では、アメリカ軍の航空機で800件述べ100万個以上の不正品が見つかっています。1990年代半ば。ペンタゴンは経費削減のため、メーカーから直接買い入れていたものを民間ブローカーから買い入れるようになったためです。コンピューターチップでさえ同様です。中国のシンセン市では、世界中から集められた中古コンピューターが解体され、電子部品が汚染された川で洗われ、道端で乾かされ、部品番号が削られ、マーケットに出回ります。
もはや絶対安全だと思われていた航空機の世界でもコピー商品の脅威に曝され、われわれの生命の安全が脅かされています。