広島市議会議員(安芸区)

「70歳死亡法案、可決」

 いい顔、ふやそう。沖宗 正明です。
 肌寒いかと思えば、汗ばむ日差しりになったりと不純な気候が続いています。ご自愛ください。


 表題の「70歳死亡法案、可決」は幻冬舎から発刊された衝撃作です。以下、そのフィクションの内容を紹介します。


 2020年2月に、高齢者が3割を超え、破綻寸前の日本政府が「70歳死亡法案」を強行可決させます。施行までは2年です。これにより、日本国籍と有する者は誰しも70歳の誕生日から30日以内に死ななければなりません。例外は皇室だけです。政府は、安楽死の方法を数種類用意します。政府の試算では、施行初年度の死亡数は約2200万人で、次年度以降は毎年150万人が死ぬこととなります。少子高齢化が予想以上に進み、年金制度は崩壊し、医療費もパンクです。介護保険制度は認定条件や給付条件を厳しくしたにも係わらず、財源が追い付かなくなっています。「70歳死亡法」によって、高齢化による国家財政の行きづまりは一挙に解消されます。若い世代では概ね歓迎されます。


 小説では、自分を犠牲にして姑の介護をする55歳の嫁が主人公です。姑は夜昼となく嫁を呼び、「腰をマッサージしろ」、「寿司屋へ行って巻き寿司を買ってこい」、「おむつの交換が遅い」、「庭に花を植えろ」などと言いたい放題です。29歳の長男は一流の国立大学を卒業して銀行へ就職しますが、人間関係に疲れて退職します。再就職もままならず、夕方起きて朝に寝るような生活です。母親が部屋の前に食事を持ってくるのを当然と考えています。58歳の夫は、残り12年しかないので仕事を辞めることにし、退職金で世界旅行をすると言い出します。妻は、当然に自分と行くものだと思ったら、相手はなんと友達です。長男である夫の弟や妹は、忙しいとかローンで苦しいとかの理由をつけては母親の介護を拒否します。母親が財産分与をする言うと、夫婦で飛んできて「明日振り込んでくれ」などと言い出します。健気な嫁は、同級生と交わることもなく、自分のための外出もおしゃれもできず、貯金もありません。あまりの理不尽さに、夫が旅行に出た直後に怒りが爆発します。



 実際問題として、国会議員がこんな法案に賛成するはずはありません。初年度に2200万人が死亡したら、火葬場では遺体の焼却ができません。安楽死に手を下すのは医師です。医師として健康な人を殺せるわけがありません。フィクションと分かってはいても、現実味を帯びて迫ってきました。結末は、いささか出来すぎの感がありますが、社会保障の在り方、国家財政の行く末など、考えさせられる作です。こんな表題の小説が発表されることなど考えられませんでした。少し前ならバッシングの嵐でしょう。それだけ現実は厳しくなっているということでしょう。ご一読あれ。


 いま、読んでいるのは「テロ」(東京創元社)という作品です。ドイツ上空で旅客機がハイジャックされます。テロリストたちはサッカー場に旅客機を墜落させ、7万人の観客の殺害を目論見ます。緊急発進した空軍少佐は独断でこの旅客機を撃墜します。乗客164人を殺して7万人を救った少佐は英雄か、殺人者か?小説は法廷でのやり取りが続き、最後は読者自身が判決を下します。有罪と無罪の、ふたとおりの判決が用意されています。結末が楽しみです。