広島市議会議員(安芸区)

「ライオンズ、1958。」のド迫力

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 今日は秋分の日。先日の敬老の日に続いて、これほど休みが続くと緊張感が緩むのはわたくしだけでしょうか。


 今朝未明から平岡陽明の小説「ライオンズ、1958。」(角川春樹事務所)を一気に読みました。眠気も吹っ飛ぶド迫力でした。1958年は、西鉄ライオンズが巨人軍を相手の日本シリーズで、3連敗から4連勝で奇跡の大逆転優勝した年です。「神様、仏様、稲尾様」の言葉が生まれました。


 物語は、ライオンズ担当の新聞記者と、かれと兄弟分の絆を結んだ伝説のヤクザ(この二人につながりも感動的です)、史上最強のスラッガー大下弘を中心に進みます。裏切りによって親分を襲撃されたヤクザが、記者との友情を大切にしながら命を捨てて復讐に向かう姿は読むことを止めることができないほどの迫力です。男同士の友情、人間の価値とは何かを余すことなく描いた力作です。感動させるエピソードも満載です。


 不幸な家庭に育った子供たちを収容する施設の子にヤクザが野球を教えます。このチームに、ライオンズの4番バッター大下弘が率いる少年野球チームが対戦します。球審はなんと鉄腕、稲尾が務めます。
 当然、施設の子供のチームは劣勢です。最終回、施設の子供のチームの攻撃の時、相手チームの監督である大下が「ピンチヒッター、俺」と告げて敵チームの代打に出ます。すかさず球審の稲尾が「ピッチャー、代わりまして稲尾」と告げます。結果は大下が稲尾の球を見事にホームランを打ちます。ここからがすごい。大下は、骨折のため施設のチームのベンチを温めていた子を背負ってベースを一周します。その時に、大下がその子にかけた言葉は、「これは君が打ったホームランだよ」。
 別に日に、大下が記者に「最近は家内が俺が嫌いな豆腐を毎日食べさせるんだよ」とぼやきます。聞けば、「奴」という芸妓とよろしくやっている現場を奥様に踏み込まれ、それ以来、「あなたの好きな冷や奴よ」と嫌味を言われて困っているとのことです。当時のライオンズで最もモテたのは大下だったようです。しかし、高給取りにも関わらず金銭感覚がないことから、しばしば怪しい借金取りが球団にやって来たため、そのつど三原監督が球団に掛け合って払ったようです。
 また、守備が下手だった豊田泰光(最近鬼籍に入りました)がエラーした翌日の新聞に、件の記者が「豊田トンネルまたも開通か」と書きました。偶然中洲のバーで記者と出くわした豊田は怒り爆発です。すると、横で聞いていた別の記者が、「豊田、お前北新地に女ができたらしいな。ハーバーというクラブのミキちゃんだって?」と横やりを入れると、思わぬ隠し玉にタジタジとなった豊田がスゴスゴと引き下がる様子も描かれています。
 そのほか、のちに近鉄オリックスの監督を務めた仰木彬のモテモテぶりも書かれています。

 今年のカープは「神ってる」と言われましたが、1958年のライオンズはそれ以上の神がかり的な勝ち方をしたチームでした。年間35勝を挙げた杉浦正を擁する南海ホークスに最大11ゲームの差をつけられながら大逆転で優勝しました。日本シリーズではさらに奇跡的な大逆転でした。


 しかし、関西から進出したヤクザが当時のライオンズに食い込み、八百長を仕掛ける試みまで描かれています。これが後の「西鉄黒い霧事件」につながったと書かれています。当時の西鉄ライオンズは博多だけでなく、九州全体の夢であり、戦後復興の象徴でした。野武士と呼ばれた個性的な選手たちの素顔も描かれています。久しぶりに感動が残った力作でした。








 上の写真はスペイン、コスタ・デル・ソルのマルベージャです。地中海に面したリゾートです。写真では明らかではありませんが、対岸のアフリカのモロッコが見えました。