広島市議会議員(安芸区)

素晴らしい広島市の水と水道料金のしくみなど

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 寒い日が続きます。今日は広島市の水のはなしです。
 わが国では水と安全はタダと言われてきましたが、昨今の社会状況では安全はとてもタダではすまなくなっています。一方の水はどうでしょうか?まだタダで無尽蔵に湧き出てくるものとお考えでしょうか?
 「仮想水」ということばがあります。あるものを生産するために必要な水の量をいいます。例えば、牛肉100グラムを生産するのに約2トンの水が必要だといわれています。東京大のグループが、穀物や肉類を生産するのに灌漑用水、雨水など、どれだけの水が必要かを試算しました。小麦、トウモロコシなどの穀物には蒸発する水分や歩留まりなどから製品の重量に対して約2000倍の水が必要であり、精肉は家畜が飲む水に、すでに多量の水分が投入されている飼料の分が加わることで、豚肉では6000倍、飼育期間が長く歩留まりの悪い牛肉では2万倍、つまり100グラムなら2トンとなるのです。これを基に日本が輸入した農作物を「水」に換算すると年間640億トンということになります。これは国内で消費する水の7割を海外に依存していることになるのです。すでに中国では水の地域的な偏在が問題となっており、南の揚子江から北の黄河へ水をパイプラインでつなぐ計画が検討されています。日本でも、このまま水の浪費を続けられるはずはありません。
 さて、わたくしは広島市議会で平成13年6月から上下水道委員長を1年間務め、大変に勉強になりました。以下、皆さんがご存知ないであろう事柄を書きます。
 広島市においては、いかなる水道も統一料金であると思っていませんか?水道料金は、一般の家庭用、業務用、プール用、公衆浴場用(銭湯)の四つの体系があり、家庭用、プール用、公衆浴場用に属さないものはすべて業務用となります。なぜ分けているかというと、プール用、公衆浴場用は、その公共性からして家庭用よりもはるかに安く設定する必要があるためです。家庭用料金は平均で約120円/㎥であるのに対し、業務用は約240円/㎥と2倍になっています。つまり、一般家庭用には安く提供し、その分は企業が高い料金を負担している構図です。家庭用と業務用を比べると、使用水量ではそれぞれ73%、27%であるのに、金額では57%、43%と逆転します。因みに市内で最もよく水を使う企業、つまり広島市にとって最もありがたい顧客は基町クレドで、年間45万トンを消費しています。この量は広島市全体の一日の水道使用量にほぼ匹敵します。基町クレドが支払う年間の水道料金は約1億3700万円となっています。
 一般的には多くモノを買えば単価は下がるのが普通ですが、水道に関しては多く使うほど単価は上がるような料金体系になっています。広島市としては、収益を上げるためには市民に多く水道を利用していただきたい反面、節水を呼びかけなければならないというジレンマがあります。
 平成13年10月に竣工した山県郡加計町温井ダムは、24年の歳月と1,750億円の建設費を要しました。アーチ式ダムとしては、第4黒部ダムの186mについで国内第2位の156mの高さを誇っています。周辺にはレジャー施設も完備し、家族で一日楽しめる場所です。その雄大な姿は一度は訪ねる価値があります。温井ダムから広島市をはじめとして呉市や瀬戸内海の島嶼部まで給水し、渇水期の給水制限の不安はなくなりました。同ダムへの広島市の負担金は367億円で、このうち1/3は国からの補助、1/3は広島市の一般会計から拠出し、残りの1/3を広島市水道局が負担するので約122億円が水道料金に跳ね返ることになります。
 広島市の市街化区域における上水道普及率は平成18年度末で97.5%です。わが広島市において上水道が完備していない地域などありえないと思われるかも知れませんが、面積の広い安佐北区には未給水地区が数ヶ所あります。わたくしの住む安芸区でも瀬野町の榎山地区と、みつぎ団地、うぐいすが丘団地に上水道が給水されたのは平成14年度のことでした。実はこの未給水地区の解消にはとてつもない費用がかかります。現在の第7次水道拡張事業計画では、平成18年度の未給水地区の解消の事業費は約5億円です。平成19年度以降、平成29年3月までに給水する計画の2900世帯に対しては113億円を要します。これは1世帯あたり390万円となります。極端な話が数百m離れた1軒のために数千万円をかけなくてはならない場合もあるのです。これはあくまで市街化区域についてであり、市街化調整区域は含まれていません。 
 最後に広島市水道局の誇るべき話をします。広島市の水道水は厚生省の「水道水のおいしい都市32」のひとつに選ばれており、多くの分析データでも政令市では最もおいしい水を供給しています。太田川の良質な水の賜物です。また、広島市上水道は明治31年に給水を開始して113年目に入りましたが、1日たりとも断水なしという輝かしい記録を誇っています。ということは、あの原爆投下の日も翌日も給水し続けたことになります。原爆によって水道管があちこちで破損し、その修復のために穴を塞ぐ「くさび」を探し回ったエピソードもあります。当時の水道局員の労苦が記録に残っていますが、ただただ頭が下がるばかりです。
 取り止めのない「水のはなし」でしたが、広島市の水道が可愛く思えるようになったでしょうか?石油や希少金属などをほとんど持たない日本にとって豊富な水は大切な資源です。大切に使いたいものですね。