広島市議会議員(安芸区)

「なぜ人を殺してはいけないのか」に対する答え。

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 ピョンチャンオリンピックが開かれました。中にはオリンピック競技としてふさわしいのか疑問に思えるものもあります。嫌なら見なければいいだけの話ですね。


 「死刑 その哲学的考察」(ちくま新書)を読みました。著者は哲学者で津田塾大教授の萱野稔人(としひと)です。究極の死刑論との副題が付せられているように、眼から鱗が落ちるような内容が満載です。例えば受刑者一人当たり年間の予算は約300万円にも上ることには驚きです。広島拘置所の年間の医療費は約2000万円ということを所長から聞いたことがあります。受刑者は健康保険に加入していないのですべて自費になるからです。また、仮釈放なしの終身刑は、大阪教育大附属池田小学校で児童を殺傷した宅間守のように、自分が死にたいから事件を起こした者に対しては意味を持ちますが、凶悪犯罪を起こしていながら死にたくないものに対しては救いになります。


 「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いに対する答えを皆さんはお持ちでしょうか?この本を読むまでのわたくしの答えは、質問者に対して「あなたは殺されてもいいのですか?自分がされたくないことを他人にしてはならない。それが嫌なら人を殺せないでしょう。」というものでした。しかし、先の宅間守のような者に対しては答えになりません。ほかにどんな答えがあるでしょうか
(1)「かわいそうだから」→憎たらしい奴なら殺してもいいのか。
(2)「悲しむ人があるから」→身寄りが全くなく、悲しむ人がいなければ殺してもいいのか。みんなから本当に嫌われて、誰も悲しまなければ殺してもいいのか。
(3)「誰も人の命を奪う権利を持っていないから」→これはわたくしがかつて持っていた答えと同様でしょう。
(4)秩序を守り、社会を存続させるため」→秩序を守るためなら、人を殺してもいいのか。死刑がこれにあたります。日本では死刑制度を残すことに賛成は70%以上です。多くの人は、時と場合によっては人を殺すこともやむを得ないと考えているということです。日本海を渡って他国が攻めてきたら、相手を殺さなければ日本が滅ぶでしょう。


 カントは定言命法を主張します。定言命法の反対は仮言命法です。仮言命法とは条件付きの結論です。たとえば、「試験に落ちたくなければ勉強しなさい」や、「お菓子を買ってあげるからおとなしくしなさい」などがこれに当たります。定言命法は一言でいえば、条件なしで「ダメなものはダメ」ということです。カントは、他人の命を奪った者は自らも刑罰によって死に処されるのでなければ正義は実現しないと考えます。同等性の原理ともいえます。
 究極の死刑論にふさわしい力作でした。

 注文した本
1.「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート NHK出版
2.ブータン 神秘の王国   NHK出版 
 ブータン国王から、最高の称号であるダショーを送られた西岡京治ブータンの農業を指導し、今でも多くの人が彼を慕う。
3.グリーン上の政治家たち 産経新聞出版
 元参議院議員の石井一が見た素顔の政治家たち。石井さんはスタンフォード大学院を卒業しただけあって、サックスを奏で、ジャズをうたうダンディな形です。