広島市議会議員(安芸区)

ワシントン地下鉄・バスで無賃乗車が急増した理由

 

いい顔、ふやそう。沖宗正明です。

 ワシントン市議会は2018年12月、地下鉄・バスの無賃乗車を刑事罰から除外する条例を制定しました。ワシントンの人口に占める黒人の割合は41%ですが、当時、無賃乗車に占める黒人の割合は90%を超えていました。貧困率が高い黒人に前科が付けば、ますます就労などの機会が狭まることを考慮しての措置でした。結果として起きたのは無賃乗車の急増です。乗客が自動改札機を乗り越える光景は常態化し、子供の通学パスを親が使い、子供が無賃乗車するケースも多発しました。運営会社の損害額は年間約50億円にも上り赤字体質に拍車がかかりました。そこで約50億円をかけて改札に強化プラスチック製のゲートを設置することとし、料金を値上げしました。これに反発したのが一般市民です。「正直者が損する」と、当然の主張です。一方で、「黒人の摘発が多いのは警察が恣意的にかつ集中的に黒人を取り締まるからだ」との黒人側に立つ主張もあります。

 人種差別はアメリカ社会の宿痾です。とはいえ、弱者救済が現実や社会通念から乖離すれば摩擦を生み、社会秩序を乱すことに繋がることも確かです。日本もこの例を「他山の石」とすべきでしょう。考えさせられる現実でした。