広島市議会議員(安芸区)

久しぶりの看取り

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。


 先日、久しぶりに患者の死を看取りました。友人のクリニックを手伝う中でのことです。たまたまその日にわたくしが24時間のオンコールの当番に当たっていました。午後に回診した時には血圧が低下し、意識もなくなっていました。下顎呼吸もあり、手足にはチアノーゼが出ており、翌朝までは持たないと思われました。午後9時過ぎに呼吸停止となり、まさに「眠るような」最期でした。
 

 葬儀社の車にストレッチャーが運びこまれ、クリニックを去る時には、「お浄土に旅立つ」という言葉を実感しました。この瞬間にも世界のどこかで新たな生命が誕生したであろうことを思いました。


 死亡診断書を書くに当たって、その方が歩んでこられた80余年の人生がどのようなものであったのかに思いを馳せました。数十億年の地球の歴史の中で、わずか80年は取るに足らない時間でしょう。しかし、この方は確実にこの世に存在し、天寿を全うしました。医師として死とは何かを改めて考えさせられた看取りでした。ご冥福をお祈り申し上げます。


 折しも、今朝我が家の廊下で昆虫を見つけました。2センチほどのゴミかと思いましたが、拾い上げると、わずかに動いていることで昆虫だとわかりました。おそらくクワガタのメスでしょう。手のひらで懸命に脚を動かす健気な姿を見て、愛おしくなりました。ベランダの植木鉢においてやりましたが前に進めません。まさに「虫の息」です。まもなく死を迎えるでしょう。


 人間であれ、虫であれ、命の尊さに変わりはありません。盆を終えたこの時期に体験した二つの死の荘厳さでした。