広島市議会議員(安芸区)

奈良時代には日本語の母音は八つあった


 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。

 これほど難渋した文庫本は初めてです。「日本語の発音はどう変わってきたか」を読み始めた感想です。「はじめに」のわずか3ページ半だけでも何度も読み返しました。

これに比べるとスペイン語の入門書ははるかに簡単でした。

 

 現代の日本語の母音は「あいうえお(aiueo)」の五つですが、奈良時代にはこの他に「ゐ(wi)」、「ゑ(we)」、「を(wo)」の三つがありました。

 石(いし)は「イシ」と発音しますが、田舎(ゐなか)は「ウィナカ」と発音していました。同様に声(こゑ)は「コウェ」、終わる(をはる)は「ヲハル」と使い分けられていました。さらに、富士(fuji)と藤(fudi)、梶(kadi)と火事(kwaji)、京(kyau)と今日(kefu)などが違う発音で区別されていました。

 また、古代の日本語には「h」の音がなく、奈良時代の「は行」は「パ ピ プ ペ ポ」に近かったようです。母は「パパ」と発音されていました。この破裂音が次第に弱まって、「ファ フィ フ フェ フォ」になっていきました。「羽柴秀吉」は「ファシバフィデヨシ」となります。

 中国語の発音はピンインと呼ばれるローマ字式の発音記号が用いられますが、古代の日本語も同様です。たとえば「石津」は「イシズ」と「イシヅ」が使い分けられていました。時代は下がりますが、「饅頭」は本来「まんぢう」でした。歴史的仮名遣いの奥深さとありがたさを思い知らされました。中国では漢字を平易な略字に変形させ、表意文字としての本来の意味を失っていることに対して優越感を抱いていましたが、日本語も同様に時代と共に大きく変化してきたことがわかりました。とはいえ、漢文を一気に日本語に訳すことに成功し、漢字に万葉仮名を振り分けた先人の知恵には脱帽です。

 

 もう一点、面白いことが示されていましたので紹介します。

「知っておきたい新型コロナワクチン接種の基礎知識Q&A」

「決算特価 最大15%OFF! お値打ち品がドッサリ満載」

 この二つの新聞広告に違和感を持つ方はいないでしょうし、その内容も直ちに理解できるでしょう。しかし、これらは世界的に見て驚異です。なぜなら、漢字、平仮名、片仮名、ローマ字と4種類の文字が混在しています。指摘されて初めて気づきました。

 

 この文庫本を読破するには相当な時間がかかりそうですが、エッセンスだけでも吸収したいものです。