広島市議会議員(安芸区)

死刑絶対肯定論

 いい顔、ふやそう。沖宗正明です。
 ごく短時間ではありましたが、涼しい朝でした。


 「死刑絶対肯定論」(新潮新書)。すごくショッキングな題名です。内容も同じくショッキングでした。
 作者は美達大和(みたつやまと)。無期懲役囚として刑務所暮らしをしています。彼は2件の計画的な殺人を犯し、本人も死刑を覚悟していたそうですが、予想に反して無期懲役となったものです。現に死刑囚と接しているだけに内容は迫力あるものでした。


 犯罪白書によると、我が国の殺人事件は昭和20年代半ばから30年にかけて年間3000件をピークにして減少傾向にあります。 
 平成16年1,419件
 平成17年1,392件
 平成18年1,309件
 平成19年1,199件
 平成20年1,297件
 平成21年1,097件となっており、毎年1000人以上が殺人事件の被害者になっています。


 作者が実際に接した死刑囚のほとんどは反省していないそうです。計画的でなく殺人を犯した者は「あんなところにいるからだ」「向かってくるからだ」「騒ぐなといったのに大声を出しやがって」「盗られたってどうせ会社のものなのに邪魔しやがって。おかげでこっちがこんな所に長く入ることになった。被害者は俺だ」などと呆れるような自分勝手な理屈を並べているようです。


 また、受刑者にとって塀のなかは外にいるよりはるかに時間が早く流れて行くそうです。10年なんてわずかなもののようです。「10年なんてションベン刑だ」「15年くらいで一人前」「あと10年くらいは我慢できる」「10年なんてあっという間だ。右向いて左向いたら終わりだ」などなど。


 日本では永山基準が適用され死刑判決は限られています。先日無期懲役が確定した木下あいりちゃんの殺人犯も被害者が1人ということで死刑にはなりませんでした。もはや永山基準は見直すべきときに来ていると思います。幼児殺害は斟酌する必要はないでしょう。死刑基準の再設定が必要です。


 仮釈放なしの終身刑を導入せよとの意見がありますが、わたくしは反対です。無期懲役囚のたった一つの希望が仮釈放です。無期懲役囚の仮釈放までの期間は平均35年だそうです。もし仮釈放がなかったら希望を失い、何をしでかすか解りません。看守も周囲の受刑者も危険にさらされるでしょう。


 遺族の悲しみは生涯続きます。たとえ犯人が死刑になっても心は癒されません。しかし、死刑で気持ちの整理はつきます。
 わたくしの知人は家族を殺害されました。その犯人はわずか6年で出所したそうです。家族の悲しみ永遠に癒されることはないのに、犯人は数年で社会に出てくる。ご家族の心中は察するに余りあります。何の罪もない人の生命を奪っても、被告の反省の情や、生まれ育った環境を斟酌し、「あるかどうかも解らない更生の可能性がある」として死一等を減じることも多いようです。作者は被告は裁判所でウソをつくと断言しています。死刑になりたくない一心で反省したフリをします。死刑を免れた無期懲役囚の多くがそう語っているようです。裁判所での被告を裁くのではなく、犯罪を犯した時点での被告を裁くべきでしょう。今回の絞首刑場の公開についてのコメントも、被害者の恐怖、無念さよりも加害者の人権に配慮しすぎているように思えます。


 本来なら死刑になるべき被告が無期懲役になっても、いつか仮釈放になって社会に出てきます。そんなリスクを負うのはわれわれ善良な市民です。


 かけがえのない命は自らの命で贖うしかない。それが古くからの日本人の感情でしょう。
 わたくしは断固死刑廃止に反対です。